第8話 帰還
夕霧を身籠っている夕月を気遣いながら、歩を進め、時折、猪の「
従者三人の腕前も素晴らしく、連携もとれていて、下手な雑兵なら二十人が束になっても勝てないだろう。
そうして五日間かけ、夕刻近く、
「とりあえず、しばらくの間は、ワタクシが聖眼に目覚めたことは、塩之祇郷の皆様には、内緒にしていてください」
「は。承知仕りました」
すると……郷の入り口の方から『……ズドン!ずだだだだ‼‼‼‼」と、と、なかなか良い体躯をした少年が、突進してきた!そして、弥の胴ッ腹に、ガシリと、しがみ付いた。
「
「へっ、何だよ
「ただいま……村正……無事に帰ったよ。ふふ」
この村正という少年は、塩之祇郷の鍛冶師の跡取り、それより、弥と雪乃にとっては、本当の弟のように可愛がっている。
「……ねぇてか、弥兄の後ろにいる、綺麗な二人は誰だん?」
「あらぁら、
「ワタクシは、マサトと、申します」
村正は、四人をぽぉ~~~っと、見た後、
「弥兄は、三人も嫁さん貰うのか……?塩之祇郷に、そんな慣例なかったから、それを変える弥兄は、すごいな、ぅん」
「え”ぇ、ち、違う」「は⁉は”ぁ」「ぁ、あららぁ……」
「村正!ワタクシは、
……良い大人が童の一言で、顔を赤らめ慌てふためく様は、滑稽である。
「……ところでさぁ……弥兄が明日からオイラの学術指南してくれよ……」
「どうした?いきなり、聞かせろ」
(塩ばあちゃんの指南……怖いんだもん……)
「へへ、大変だったな、まあ、あれでために、なるんだがな。任せときな。でも面倒見れんのは、ひと月くらいかもな!」
「それでも、弥兄に見てもらえるの、嬉しい‼‼‼‼」
御国では、「青龍殿の
平民の子息らは、学識の高い親族・知人から、武の稽古は心得のある者に教えを求めた。
その点、弥はと言うと、剣術の師は、剣聖の祖父、暗殺術の師は実父、焔術の師は、焔術師の実母と祖母、今は一線を退いているが、母は九十七代・時仁様より・祖母は九十六代・春仁様より聖印の
そして、学問に於いては、塩婆こと、
「なぁに、やってんだい…………?」
塩婆が、阿瑠華と共に迎えに来た。
「ひぇややぁ⁉」
びくついた声を上げ、村正が弥の後ろに隠れる。
塩婆は、そんなこと、気にも留めず、マサトの元に向かう。一言……
「……目覚めて、己の出自を知ったんだね…………」
「はい、『
「やめとくれ、この郷では、塩婆の光波だよ」
弥の背後に……スっ…………人影が現れる……
「弥様……」
背後に気摂られず……
「……い……ぃ」
虚を突かれ、弥は、少し跳ねた。
「……ぁ、申し訳ございません、ぉ、驚かせるつもりは……」
その男も少し焦って少し焦っていた様だった。
「ほっ……なんだよ
「戯れも、その辺に……あなたが本気を出したら、どうなりましょうや……少しは、御自分の立場をわきないまされ……」
「お褒めの言葉、恐悦至極に存じます。当代、智弥様からの修行のお陰です」
「みんな‼この者は
大事な同胞だ。斥候と暗殺が主な仕事で、歳は俺と一緒だが、これでも塩之祇郷の隠密衆五十人を束ねる頭領だ‼‼」
主従関係とはいえ、幼き頃より互いに研鑽を積んできた友であり戦友だ。
「俺が留守の間、郷を護ってくれてありがとうな」
「恐悦至極に存じます……」
「みんな、仲良くしてやってくれ」
(っても、普段は姿を消してるからな……はは)
「
「隠密五十人衆の頭領……おぉ……」
小太刀使いのマサトとすれば、同じ小太刀使いの隠密の技を知りたいのであろう
すると、瑆連が振り返り、
「真仁様がお望みあらば、私がお相手いたしましょうか……?」
「……さすが兄さまの腹心……是非、ご教示願いたい!」
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