第3話 新たな「おっとりとした」七曜との出逢い

 マサトも仲間になり、彌榮郡いやさかのこおりから、船で北にすぐの媱泉郡ようぜんのこおり風早郷かざはやのさとに着く。陽も落ちかけてきたので、野宿をすることにした。

「ん~~……火の付きが悪いな」

「はぃ、どうぞ」

「おう、ありがと。『木曜』の風の加護持ちか」

「火を消すときは言ってくださいね。土か水で消しますので」

「⁉……⁉⁉え、ちょっと待て‼⁉」

「え“え”、あ、そうですよね、野宿なのに、囲い火を消したら駄目ですよね……へへ」

「っち!違う‼‼普通は加護は五行で『木』『火』『土』『金』『水』の一つに決まってるだろ⁉」

マサトが頬を引きつらせながら答える。

「……ぇ~へへ、それがですね……威力はうら淋しい(ショボい)のですが、ワタクシは五行全てを使役出来るのです……母様からは、他の人には見せてはならぬ、と言われたのですが、兄さまと姉さまなら、見せても大丈夫かなと……まぁ火閃なんか出せないですし、小さい火玉で火起こしをして、風を呼んで、鍋に具を入れて、水を張って煮て、火が弱ければ、風で乾かした枝葉を木霊で集めて、火の力を整えて、あと竈は土の加護を使えば、しっかりしたものが出来ますよ。姉さまも驚いてましたし」

(多分、俺と同じ理由で驚いたんだろな……)

「あと『金』の術で、やじり=矢の先端、を作ってます」

「ぃ、いや……それだけ五行を使役出来るのは、スゴイことだと思うぞ……」

(なんだよコイツ、賢人なのか、多芸に無芸(器用貧乏)なのか……)


 マサトが近くにあった泉に水を汲みに来た。スゴイ綺麗な泉だ、水の女神めのかみの加護でもかかっているのか……すると……泉で水浴びをする、天女のような少女と出逢った……マサトは、あまりの美しさ、神々しさに動けない……

「ぁわわわ……」

すると、少女が気づき微笑む。

「申し訳ありません、とても澄んだ泉だったので、つい……フフッお見苦しいものを見せてしまい……」

「とんでもございません。女神めのかみが現れたと驚いてしまいワタクシこそ申し訳ございません!」

「まぁ……嬉しいことを仰ってくれるのですね、可憐な姫君」

「ぉ……畏れながら、ワタクシはおのこに御座います……」

「ぁらまぁ……綺麗な御顔だから、ごめんなさいね。貴方はお一人で……?」

「ぁ……いえ血は繋がってないですが、兄さまと姉さまの三人で旅をしてます」

「あら、でしたら、皆さまと、お会いしたいですわ。ずっと一人旅でしたので」

少女は柔らかく微笑んでいる……

「は、はぃ、かまいませぬが、出来れば何か羽織って頂けませんか……?ワタクシの目の遣り場に……」

「ぇ、あらまぁ、そうですわね……」

(な、なんだこの御方、無防備過ぎる……ぇ、いや前にも似たような事が……)

※雪乃です

小迦華を野宿の場所に案内する。

「おいマサト、その麗人は、誰だ?」

「ぁ、泉でバッタリ出逢って……」

「奥手のお前にしちゃ面白いね」

「ぃいや、そんな……」

「お初にお目にかかります、私は『醐柳こやなぎ小迦華こかげ』と申します。七曜の血を引いており、修行のため、各地を巡っております……一人旅をしておりましたが、心許なく、宜しければ、皆様の旅の末席に加えて頂けたらと……」

「あんた自分から七曜を名乗ったね……て、ことは俺と、この雪乃が七曜の血筋と分かってんだね」

「ぇえ、巡り逢うものですね……」

雪乃と小迦華の眼が合う、凛とした空気が張り詰める。

「貴方と私は、同じ水の守護ね……私は『月曜の七曜』、貴方は『水曜の七曜』ね」

「……そうですわね」


「……ねぇ‼お風呂好きぃ~~~?」

「大好きですぅ~~~!」

「マサト‼‼土の術でお風呂に丁度良い穴を造りなさい‼‼」

「は、はい姉さま‼」

「弥‼‼焔術の用意なさい‼‼」

「ぉぉおおう」(な、なんだいきなり⁉)

雪乃と小迦華は、お互いの両の掌を合わせ、

「御水よ‼‼」

澄んだ水の塊が浮く

「ほら‼‼弥‼焔で温めて‼‼」

「ぇ”え”ぉおう」

そしてマサトが造った穴に温まった綺麗な温水が溢れる……

雪乃と小迦華は、

「やったぁ~~~!お風呂ぉ~~~‼‼」

乙女二人は全裸になり飛び込む。

(なんじゃこれ……まぁいいか、俺も入ろ……)

マサトは木陰でしゃがんでいる……

「ねぇ!マサトも入らないの⁉」

「……あとで一人で入ります……」

 夕餉ゆうげが始まった。

「‼‼ぁら、なんて美味しいお肉ですの⁉」

「ああ、それは鹿の禍忌まがきの肉だ」

「ぇ”ぇ”え!……禍忌のお肉……初めて食しましたわ……こんなに美味しい……」

「びっくりしたろ?元々禍忌の肉は、瘴気をまとってるが、この御塩で浄されて、柔らかく、旨くなるんだよ」

「もしかしたら、塩之祇郷しおのぎのさとの『海神様の御塩』ですか?」

「へぇぇ、よく知ってるね、俺は十年あの庵で働いてて、旅立ちの日に、ばあさんが、たんまりくれたんだ!そんな有名なのか?」

「それはもう、有名もなにも、『神の御塩』として、御国中に響き渡ってますよ」

(ばばぁ、すげぇな……)

「ところで、皆様の旅の目的は、何ですの?」

「それは、私のことなの。目的は、賢正郡けんせいのこおりにある神殿『月虹殿げっこうでんに行って、『天扇てんせん蒼月華そうげつか』の是認の主になること……」

「ぁらまぁ難儀な事ですねぇ。これも七曜の縁ですわね……私も手伝わせてくださいな、ふふ」

「小迦華……良いの?」

「はいな」


 弥が語りだす……

「せっかくの機会だ……俺たちの今ある状況について話し合おう。今は皇歴一三九七年、で、十五年前に『青龍殿の変』が起きたな……時の九七代・聖皇『時仁』様が弟の為仁親王に謀殺(毒殺)され、生後三か月の東宮は、中宮の手により切り裂き、殺されたと……そのあとの中宮の足取りはつかめず。

 そのあと直ぐに、為仁親王は自らが九八代・聖皇の即位を宣下した。それと同時に為仁様の嫡子『貴仁』様を立太子させ、東宮にすえた。

 その後、七曜は、二つに分かれた。七曜は全員、九七代に集結していたが、為仁の非道な暴虐を是とせず、『彌榮いやさか』『媱泉ようぜん』『倫姚りんよう』『零楽れいらく』は、みやこへの「みつぎ」は、納めるが、中立の立場で、郡の政は、郡で行う。『典尚てんしょう』と『賢正けんせい』は、為仁様に付いた。

 現今の御国は、こんな感じだ。俺はとりあえず、今の七曜の継承者に会おうと思う。仲間になるか、敵になるか分からんが」

「なるほど、確かに理にかなってますね。七曜に会うのは。兄さまと姉さまと、小迦華さん……あと四人ですか……長くなりそうですね」

「ぁ、マサト様、私のことは『小迦華』と呼んでくださいね……」

「は、はい、こ、小迦華……」

「嬉しいですわ……」

(文官の父さんの話では、年々「貢」の要求がひどくなってるらしいな……今の朝廷を革める必要がある)

「まあ、今は、あんまり良い国ではないって、感じだね~って、とりあえず御国中見てまわろうや


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