孤独な旅

目を覚ますと、そこは見知らぬ場所だった。


街ではない。建物もない。ただ、灰色に染まった空と、地平線まで続く荒野が広がっていた。


ボクはゆっくりと立ち上がる。風は吹いているのに、寒くも暑くもない。どこまでも静かで、どこにも行き場がない。


──いや、ひとつだけあった。


遠くの地平線の向こうに、ぼんやりと黒い塔のようなものが見える。


「まさか……あそこに行けってことか……?」


影の言葉を思い出す。


──「世界を戻したいなら、代償を払え」


代償とは何なのか。それを知るために、ボクは歩き出した。


終わりなき荒野

歩いても歩いても、景色は変わらない。何もない大地。何もいない世界。


ボクは一人で歩き続けた。


──食べ物も水もないのに、不思議と空腹を感じない。喉も渇かないし、疲れもしない。ただ、歩くことだけが許されているようだった。


「これ、終わるのか……?」


どれくらい歩いただろうか。時間の感覚がなくなり、頭の中に孤独が染み込んでいく。


ふと、足元の地面に何かが転がっているのに気づいた。


──それは、人間の骨だった。


「え……?」


ボクのものではない。だとしたら、ここには"ボク以外の誰か"がいたということか?


それとも、これが"かつてのボク"なのか?


考えても答えは出ない。ボクは目をそらし、また歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る