14. 王と賢者、術後の物語 ―― エリザベスカラー
アーサーの手術が無事に終わったとはいえ――
問題はまだ終わっていなかった。
いや、手術クリアしたのに第二の試練が待ってるなんて聞いてないよ!
そう、エリザベスカラー(別名:ラッパ)問題。
多くの猫がこれを全力で嫌がるらしい。
当然、アーサーも例外ではなかった。
細身な彼女は、カラーをつけて5分後には
**「すぽっ」**と脱出。
アーサー女王、さすがの身軽さ! でもこれ、意味ないじゃん!?
私たちは絶望しかけた。
が――奇跡の方法を発見する。
■ 王には、称賛を。
「アーサー、似合ってる〜! 女王って感じ〜!」
「あらやだ、美人〜! おしゃれさん〜♡」
そう、
ひたすら褒める。
すると――
アーサーは一瞬「ん?」という顔をして、
そのままラッパ姿で堂々と歩き出した。
まさかの……承認。いや、こんな簡単な方法で解決!? アーサー、単純すぎるだろ!
どうやら彼女は褒められるのが大好きらしい。
(※女王らしすぎる)
以来、彼女は自ら進んでラッパを装備。
鏡の前に座ってポージングまで始めた。
■ 本当に美しい女王
実際のところ、アーサーはかなり美形。
脚は長く、体は細く、毛色は上品な黄金色。
顔も小さくて、韓国アイドルみたいとよく言われる。同居人は『いや、アイドル超えてる!』って本気で言い張るし。
■ 賢者マーリンの番
そしてやってきた、マーリンの去勢手術日。
オス猫の手術は比較的簡単で、回復も早い。
なので、心配は……まあ、ちょっとだけ。
結果は――
超元気に帰宅。(跳ねまくり)
はい、問題はエリザベスカラーである。
アーサーと同じく、マーリンにもラッパを装着。
しかし、彼は一切嫌がらなかった。
(たぶんアーサーが先に着けてたのを見て、「そういうもんなんだ」って納得したっぽい)
さすが哲学者、状況適応能力バッチリだな……って、感心してる場合じゃない!
……が。
■ 賢者、知恵を使う。
なんと彼――
ラッパのフチを使って傷口を掻いたのである。
いや、賢者ならその知恵を傷守るために使ってくれよ!?
「えっ!? そんな使い方ある!?」
驚いた私たちは、翌日すぐに対策。
買ってきたのは、やわらか素材の「ドーナツ型エリカラ」。
ふかふかで、見た目は完全に浮き輪。
それを装着したマーリンは……
そのまま枕にして爆睡。
「寝心地、最強……」って顔だった。
アーサー女王がラッパでポージングしてる横で、こいつは浮き輪で寝るって……この差なに!?
いや、強すぎんか君……?
■ 最後の儀式と、つかの間の邂逅
そして――
アーサーの抜糸の日がやってきた。
ついに、男医師との初対面。(※担当医だけど会ったことなかった)
アーサーをキャリーバッグに入れて、いざ病院へ。
彼女はバッグの中で布を被って顔を隠すスタイル。まるで『臣民に顔を見せるな』って女王の貫禄全開だよ!
当然、エリカラもその中で脱落。
病院でカラーなしの姿を見た男医師が一言:
「……ちょっと狂暴な子?」
私たち:「いやいや、すごくおとなしいですよ!」
その会話の間に、
シャキン。
抜糸、完了。
「はい、終わりました〜」
えっ……早っ!?!?
呆然としている私に、医師はサラッとひと言:
「じゃ、帰っていいですよ〜」
えっ……
えっ!?!?
せっかく来たのに、滞在10秒。
いや、こんな速攻で終わるなら、せめて男医さんの顔くらい見せてくれよ!?
こうして――
長かった戦いの日々は、ついに終わった。
アーサーも、マーリンも、元気いっぱい。
エリカラも外れて、もうどこにもラッパはない。
だけど、私たちはきっと忘れない。
あの夜の固い床と、ラッパを褒めて笑った日々と、浮き輪で熟睡した賢者の姿を――。
そして、アーサーとマーリンがいつもそばにいてくれることも、絶対に。
- 全話完 -
▼エリカラ姿のマーリンの写真▼
https://kakuyomu.jp/users/Yukisawa/news/16818622175902405968
猫のアーサーとマーリン 雪沢 凛 @Yukisawa
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