公園での体験談 続

【私】が社会人になって数十年。

30を半ばにした頃、学生時代の友人から連絡があった。

中学時代の友人が他界したとの内容で、【私】は知らなかったのだが

免疫不全といった病気を抱えていたらしかった。

その友人とは中学高校と同じ部活動だった事もあり、親しかった方なので

葬式には参列する旨伝えた。


葬式当日。

友人の訃報はSNSで多くのクラスメイトに伝わり、

斎場には結構な数のクラスメイトが集まり、皆早すぎる別れを悲しんだ。


葬式が終わり、斎場に集まったクラスメイトはそれぞれ散り散りに

解散となったのだが、この事がきっかけでクラスメイト達の

SNSグループが作られ、今回のみたいな訃報があるのだから、

一度みんなで集まろうか、という流れになり、中学時代の同窓会が開催された。


同窓会当日。【私】は比較的仲がよかった数人のグループで卓を囲み、

昔話に華を咲かせていた。

その時ふと、昔体験した公園での出来事を思い出し、

なんとはなしに人型の話をしてみたのだ。

「そういや昔●●公園で夜中に遊んでたら、

神社から人型みたいな影が近づいてきてさ。

 めっちゃ怖くなって逃げてん・・。」

するとその中の一人の女性(仮にAさんとする)が驚愕の表情でつぶやいた

「えっ、それわたしもみたことあるかも・・・」

以下は少し静まった卓で聞いた公園での出来事である。


Aさんが幼稚園生だった頃。

おばあちゃんに連れられて、●●神社にお散歩に出かけた事があった。

鳥居をくぐり、境内をぐるっと回り、お堀のような貯め池で花を愛でて

綺麗な石を拾ったりなど一通り遊んで帰ろうとした。

おばあちゃんと手をつなぎ、鳥居をくぐって帰路につこうとした時。

Aさんは背後から奇妙な視線を感じた。

なんとはなしに振り返ってみると、そこには2匹の狛犬の間を

くるくると回るちいさな人型が浮いていたのだ。

人型は1つではなく、複数個。複数個の人型が均等に間をあけて

手をつないで、くるくるくるくる回っている。

Aさんが不思議なその光景をじっと見ていると、

回転速度はだんだんと早くなってくる。

するとその時、おばあちゃんが見た事の無い憤怒の表情でAさんをひっぱり、

むりやり帰路につかせた。

おばあちゃんはちいさな声で一言

「もってかれるで」とだけ呟いたらしい。


【私】はもちろん、当時遭遇した人型の事をあらかじめAさんに話した事などない。

なのに遭遇した年は違えど、同じ神社で似たような経験をしていたのだ。

静まりかえった卓でAさんは一言、呟いた。

「あれ、成長してるのかもな」


そして同窓会から数日後、連絡先を交換したAさんから

個人的にSNSで下記のような投稿があった。


『結論』

●●公園、気になったので夜中に行ってみました。

例のコーヒーカップ、まだありました。

結論から言うと、特になにも起こらないし、

何も遭遇しませんでした。

でも多分、二度と行かないと思います。

夜中に公園から見る神社がすごい気持ち悪かったから。

よくこんな場所に夜中遊びに行けたわ(笑)

若いって怖いね。

あ、一応写真とったので送りますよ。

じゃあまた機会あれば遊びましょ。


この文面とともに送られてきた、夜中の神社らしき画像。

そこには確かに何も写っていなかった。

だが、コーヒーカップ越しに写る神社は

画面ごしでもわかる異様な静けさを出しており、

確かにこれは近づけないな、と思った。


思わぬ形で再開した人型の話はこれで終わる。

当然、Aさんも【私】も元気だし、

その公園でよからぬことが起こったという話もない。

そして件のコーヒーカップは、まだ公園にある。


公園での体験談 【了】






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体験もしくは耳にした奇妙な出来事 @poponon2

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