『生まれたその日に父親に殺されかけた子、後に中華春秋戦国時代の大人物となる』は、初美陽一先生が描く春秋戦国時代×運命の試練×歴史の英傑をテーマにした短編小説で、迷信と運命に翻弄されながらも偉大な人物へと成長する田文の生涯を描いた作品です!⚔️✨
紀元前中国では、「五月五日に生まれた子は、後に親を殺す者となる」という迷信が信じられていました。主人公の田文(でんぶん)は、その迷信のせいで生まれた瞬間に父親に殺されかけるという運命を背負います💀🔥。
しかし、彼は生き延び、人生の転機を迎えるたびに「父親に殺される夢」を見続ける――💭💫 その夢は、彼の人生における試練の象徴であり、彼が偉大な人物へと成長する過程を示しています。
戦国四君の壮絶な人生を、ぜひ体験してください!🏯✨📖
KAC2025の第4のお題、「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」という書き出しを指定されての本作。
中国戦国時代の戦国四君に数えられる、「孟嘗君(もうしょうくん)」という人物にスポットを当てております。
時代小説は、ただの伝記とは違い、エンタメ要素を加えるために脚色されるのが常であり、そこが大きな魅力となっているジャンルだと思います。
本作もその例に漏れず、渋い文体と史実をもとにしつつも、指定されたお題に合わせた要素が加えられております。
それが「孟嘗君」こと「田文」が見た9回の夢です。
本当にこういう逸話もあったのかと思えてしまうほどに、見事にお題を昇華されている力作です。まさにエンタメ時代小説として整えられた逸品です。
それゆえ、中国史に詳しくない私のような者でも面白く読めましたし、また「孟嘗君」という人物や、彼の逸話から生まれた故事成語に興味を持ち、実際に調べてみたりするほどです。
中国史への深い愛と、それを確かに表現できる高い実力が窺える本作。
ぜひとも一読くださいませ!
短い中に、とんでもない力強さと大河なオーラを秘めた作品でした。
田文(でんぶん)は生まれながらに「迷信」を信じる父親によって命を奪われるような危険にさらされていた。
どうにか父親から殺されることは回避できたものの、その後も「ある夢」を見る度になんらかの命の危険にさらされる。
それらを乗り越え、どんどん立身出世をし、ついには「戦国四君」の一角をなすようにまでなる。
読み進めていくとわかるのは、この『田文』が中国の歴史にその名を深く刻む人物であるということ。
最近では漫画「キングダム」で大国である秦を苦しめる「合従軍」が作られる話が出てきました。秦以外の国々が手を結び、一斉に秦に襲い掛かるという。
どうして各国が連携し、このような状況を作り上げたか。
その合従軍の「アイデア」を出した蘇秦。それを受け入れ、合従を進めた。
それが孟嘗君(もうしょうくん)という、一人の人物だった。
多くの食客を抱え、その中には様々な技芸を持つ者がいた。中には鶏の鳴き声が上手いだけの者もいたが、孟嘗君が命を狙われた時にはその才能を駆使して危機を救ってくれることにもなった。
そのことから「鶏鳴狗盗(けいめいくとう)」という、「どんなつまらない才能でも役に立つことがある」という故事成語も生まれています。
そうした有名エピソードには事欠かない、まさに傑物。
本作はそんな人物の「人生のターニング・ポイント」となる出来事の数々を「夢」を象徴として描き上げ、短いながらも強い感興を読む人の心に残すことに成功しています。
あまりにも力強い人物像。そして強い運命のような力。それらをひしひしと感じさせてくれる、圧巻の物語です。