第25話善意(と言う名の先行投資)が災いを持って来た・・・やべえ(泣)
「さァ、きビきビ行くよ~!」
「・・・あのえっと、何で
鄭商人に引っ張られる様に堺に移動する、橋本伊兵衛を頭とする小吉一行。
当初は秀吉も来る予定だったのだが、
「・・・うん?・・・待てよ?
ううん!儂はこのまま京で山科卿を含む、色々な方と交流して情報収集をする故、伊兵衛殿に後はお任せ致す。
用心棒を何人か残し長康と小吉と残りは、伊兵衛殿に同行して堺に向かえ。」
突如予定を変えて、京に残留したのである。
(あっ、このエロ猿、監視役のオレが居ない様に仕向けて、京で遊ぶつもりだな?
・・・まぁ主命達成してっから良いか。
殿が堺に行っても用事が無いし)
あっさり秀吉の企みを看破したが、其処まで厳しく束縛するつもりも無いので、武士の情けで見逃したのであった。
そうして堺会合衆の
因みに「堺」という地名は、摂津(大阪北部)・和泉(大阪南西部)・
「うぉ・・・テレビで観た、有名地方祭の
周囲をぐるりと堀で囲った
「ホれ、何シてるねボーズ?
サッサといクよ?」
小吉の驚嘆を意に介さずに、急かす様にサクサクと進む。
そうして進んで行くと鄭は、「
「毎度よ~。」
「あっ、鄭はんお帰りやす。」
「旦那ハ居るカ?」
「はい、旦さんなら在宅でっせ?」
「ホな行くよボーズ。」
「へっ?あ、お邪魔しま~す。」
傍若無人の如く行く鄭に驚きつつも、顔の前に片手を上げて、「通りますゴメンね」という日本人らしいアピールをしつつ同行する。
そうしてスタスタと勝手知ったる何とやらで、案内も無しに鄭は進んで行くと、一際大きい間取りの部屋の襖を開け、
「毎度ね~
躊躇無く部屋に入り込んだ。
「うぉっ!?たまげた!・・・何やのもう、鄭はんかいな。
毎度毎度言うてるでっしゃろ?襖を開ける前には一声掛けてくれて・・・。」
店の主らしき30代前後のポッチャリな男が、鄭に苦言を呈した。
「マーマー気にしナい。」
「それはこっちゃの台詞やわ!・・・ん?
「ドビんボー貴族の家カら。」
「言い方!言い方が悪過ぎやちょい!?」
「・・・いやあのさ、あんさんもドッコイドッコイの、ええ勝負してるやろ?」
拾得物扱いに突っ込む小吉。
「ぬぬ・・・中々キレッキレでんなあんさんも・・・年の割りにやりおるわ。」
「それはもうええから、本気でキレる前に話を進めてくれる?」
顎の汗を拭う仕草をする
「コレは失礼しました。
私、堺で会合衆という纏め役を担っている、天王寺屋当主・
以後見知りおきを。」
ぺこりと、キレイな仕草でお辞儀する。
(へ~このオッサンが「※天下
只のお笑い芸人の出来損ないにしか見えず、後の2人も同類じゃねーよな?と疑う小吉。
(※茶道の指導者として影響力を及ぼした、
因みに三大茶人は、千利休・
アレコレ話している内に、伊兵衛と長康は武器担当の手代と共に部屋から去り、鄭と小吉と宗及の3人になる。
「・・・ほう、この坊ちゃんの描いた絵を、同郷の方達に競りで売ると?」
「ソーね、だカら座敷をカシてホシーよ。」
「まぁええけど、使用料は貰いまっせ?」
「だソーよボーズ。」
「うぇ!?・・・後払いでよろしく。」
長康に頼んでコッソリ持ってきた、ヘソクリを泣く泣く吐き出す覚悟をする小吉。
そうして翌日、借りた座敷に50枚近い絵を、部屋に沿う様にロの字に並べ、中央部を開けて360°見える様に配置し、競りが始まったのであった。
「
「
「
「???・・・誰やねん?毘沙門天か?」
中国語が飛び交う中、さり気なく関羽を指差し、同じ「財神」をチョイスする宗及。
(いや~良かったぁ、在庫処分が出来て。
熱田とか津島とか貿易都市がある尾張だから、バンバン明船が来るかと思って、三国志のキャラを描いたのはええけど、全っ然来ねーから捨てようかと思ってたけど、堺に来る機会が有ってホンマに良かったわ。
とりあえず売れそうだし)
ホッと胸をなで下ろした。
この時代の日本では三国志はまだまだマイナーであり、逆に本場の明では
ソレを当て込んで描いた小吉だったが、肝心の明船が来ないのを知って、愕然としてお蔵入りしていたモノを持ち込み、あわよくば儲け様と皮算用を目論むのであった。
「ソれジゃ始めルね・・・500貫よ!」
初っ端から開催主の鄭が飛ばす。
ザワ!?ザワザワ・・・ザワザワ・・・
(うひょ~!?一枚十貫相当!?
鄭さんありがとー!!
鄭様を拝む小吉。
鄭が飛ばしたせいなのか、他に買い手の付かない状況を観て、「もう一声」と思い、
「え~と、私の作品を最高値で買ってくれた人は、コレらもオマケします。」
カンフル剤を投入する。
そのカンフル剤とは、演義で出てくる美人をモチーフにした、ウッフンな
「あ、バカ!?そレ出し夕らダめよ!!」
「「「「「ウォォォォォォオ!?」」」」」
焦った声の鄭と共に、狼の様な吠え声を出す助平野郎共。
実は戦国時代の日本(以外も?)は、春画が普通にバカ売れしている時代であった。
戦場に於いては、一応「
そんな淋しい夜を過ごす、大多数の野郎共の夜のお供として活躍した(?)のが、天画ではなく春画である。
実際にこの時代の画家の
流石に杉屋の店先で売るのは憚られた為、家次の紹介でボロ寺の住職と話をつけ、闇市の如くコッソリと小吉は売る様にし、寺の参拝を装った野郎共に売っている。
特にとある熊髭のゴツいオッサンが依頼して来て、シリーズ化したノッブの妹・市の危絵や春画などは、ダントツの人気と高値で密やかに売れており、市の春画は熊髭のオッサンが目の色を変えて、金に糸目を付けず買い占めるぐらいの人気っぷりであった。
なので・・・
「700貫!」「850貫!!」「千貫よ!」
尾張の闇取引に参加する野郎共と同じく、目の色を変えてヒートアップする。
最終的には三国志の好事家で、助平心も併せ持つハイブリッドな商人が、1千5百貫余りで落札してくれて、在庫処分のつもりが大儲けになった小吉。
ついでに宗及も春画を
現金で運ぶと面倒なので明商人の支払いを、宗及が肩代わりする体で
後はお義理で言継に絵を描くだけになり、情報収集という名目で、遊廓に入り浸っているエロ猿を放置し、ミッションコンプリートを目指して、小吉は山科邸を訪ねた。
「おお、済まんな小吉とやら。
儂の我が儘に付き合わせて。」
「いえいえとんでもない山科様。」
(なんか貴族っつったら、居丈高で横柄な物言いをする、ってイメージがあったけど、このオッチャンは親しみ易いわ。
まぁそういう人柄だからこそ、海千山千の
なんとなく秀吉に近い感覚を抱く。
言継の要望に応えると、若干陰のある若い女性の絵が描き上がる。
「おお・・・母上にまことそっくりじゃ。
ありがとうな小吉よ。」
「いえいえ、どうしいたしまして。
しかし若くして亡くなられたのですね。」
「いや、亡くなったのは最近じゃが、幼少の折りからの生き別れでな。
儂が憶えておるのがこの姿、というだけよ。」
寂しげに微笑むと、絵に手を合わせる。
聞けば言継は山科家に勤めていた、
その為、実母が近くにいては不都合と引き離されて、実母は西国に出家同然に送られ、それっきりだった様だ。
幼少期を庶子として過ごした事で、平民に近い視点と感性=現実主義的感覚と柔らかい物腰を持った事と、「
「しかしのう・・・内蔵頭になっても何かにつけて
一向に
肩を落として深々と嘆息する。
実際に戦国期に於ける天皇家は、後期に織田信長が上洛して天皇家を保護するまで、史上最も困窮した暗黒時代であり、当時の天皇自ら自作した和歌を短冊に書いて売り、生活費に充てていたと伝わる程不遇な状況だった。
(まぁ、この山科のオッチャンが資金調達に奔走したお蔭で、ギリギリ破綻せずに済んだんだろうけど・・・・・・あれ?待てよ?)
脳内思考している最中に、ピコーンと頭上に電球が灯り、
(今のどん底状態の朝廷に、堺で儲けた銭を投資しておけば、将来的にデカい
余裕がある時の1万貫よりも、どん底の時の1千貫の方が有り難みが増すだろうし。
秀吉が将来的に天下を取る事に備えて、朝廷に
ふとゲスい打算が働き、内心で邪悪な微笑みを浮かべる小吉。
「左様ですか大変ですねぇ・・・あの、宜しければ山科様から今上陛下に、コレを渡してくださいませぬか?」
内なる邪心をおくびにも出さず、しおらしい態度でソッと証文を提出する。
「うん?・・・な!?こ、コレはい、1千5百貫の預かり証!?
しかも、堺でも有数の豪商・天王寺屋の証文ではないか!?一体どうして?」
証文と小吉を交互に何度も見返す。
「いや~自作の絵を明商人達に売ったら、これが思った以上に売れまして・・・はい。」
後ろ手に置いて、照れ笑いを浮かべる。
「しかしこんな大金・・・良いのか?」
「はい、まぁ降って湧いた様な銭ですし、山科様の話を聞いていると、曲がりなりにも私も
少しでも畏き辺りのお方の一助になれば、と思った次第にございまする。
あ、一応名目上は大半が大殿様が出し、残りをウチの殿が出した事にしてくださいね?」
自己の保身を忘れない男・小吉。
「うむぅ・・・しかしそれでは・・・。」
「私が1千5百貫を出した事を公表すれば、
「それは確かに・・・。」
小吉の言に納得する言継。
「では見返りに織田殿や木下殿に、官位を叙任させる様、主上に働き掛けようぞ。」
「あ、いえ、それも無しで。」
「何故に?」
「大殿様が求めていないのに、又者の私がそれを求めてしまえば、大殿様の赤心の志を汚してしまう事になりますから。」
理路整然と理由を述べ、首を左右に振る。
(ま、慌てる何とやらは貰いが少ない、って言う諺があるしな。
今回は朝廷に、殿とオレの名前が知れ渡れば上々吉って所だろう)
パチパチと脳内で
「確かにそうじゃが、それではお主が余りにも報われぬではないか。」
「う~ん・・・どうしても申されるなら、畏き辺りのお方に一言お伝え願えますか?」
「何を伝えるのじゃ?」
「はい、どうか「笑顔でいてください」と。」
「は?主上に笑顔でいて欲しいとな?」
小吉の要望にポカンとする。
「はい、今上陛下は至尊の位に有りながらも、我ら民草に寄り添って、世の苦楽を共にされている唯一無二のお方。
謂わばあまねく民草の心を天照らす、「心の太陽」の如き存在なお方ですから、笑顔で我ら民草を照らして欲しいのです!」
禁裏の現状を最大限格好良く表現し、ふとポンと浮かんだ清く正しい、前世に有ったとあるジュースの歌の歌詞っぽいのを入れて、それっぽく美辞麗句を力強く並び立てた。
「おお・・・おお、おお!!
世にお主の様な
小吉、いや小吉殿!必ずや、必ずや主上に貴殿の勤皇の志はお伝え申す!・・・うう。」
8割方打算で言っている、ドゲスの美辞麗句を額面通りに受けて、感涙を流すモノホンの篤志家。
「こうしてはおれん!急ぎ天王寺屋に使いを出して確認せねば!
主上にも上奏せねばならん!」
「え~と・・・帰って良いのかな?」
置いてけぼりにされて、ポツンと残された小吉は、1人呟くので有った。
そうして2日後・・・
「はっ!?
「左様、此度の
その詔を
山科言継が内々という体で、秀吉に告げる。
「飛鳥井殿が下向の際、不案内になってしまう故に尾張までの道のりを、木下殿には
「ははっ!承知仕りました!
末代までの名誉、しかとやり遂げまする!」
へへーと平伏する秀吉。
言継が帰った後に秀吉は、慌てて井兵衛を早馬で尾張に伝える様に指示を出し、長康には道中の
そして当の小吉は、「万一の朝廷からの連絡役」という、留守番を命じられて宿屋でゴロゴロしていたのだが、
「御免!貴様が尾張織田家家中の者か!?」
「あっはい、そうですけど?」
「我らは幕府からの使いの者である!
我らと共に御所まで同行願おうか!!」
突如として、幕府の使者を名乗る青年2人組が現れ、有無を言わさずガッチリと両脇をホールドし、小吉を引っ張っていく。
そうして皇居の御所と違い、白亜な白壁に立派な屋敷の一室に連行されると、
「公方様の上意である。
只今より幾つかの疑念に対して審議致す故、包み隠さず正直に問いに答えよ。」
時代劇で観た奉行所の
「えっ?えっ?何コレ?・・・ドッキリ?」
いきなりの急展開な出来事に、目を白黒させる小吉であった。
続く
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