第24話王城・京の都・・・え?都・・・?

「ふぃ~・・・やっと抜けたわ~。」

関宿から伊勢側の山間にある坂下さかした宿を経て、近江側の鈴鹿峠のふもとに有る、甲賀郡の最寄りの宿場町・土山つちやま宿を観て、漸く安堵の息を洩らす小吉。


平安期の律令時代の古来から定められた、※畿内きない(近畿地方)三関の1つなだけは有り、道も整備されている方では有るが、如何せん高低差がキツイ上に道幅が狭い所即ち、直ぐ隣が崖という難所が伊勢側にはかなり多く、小吉は現代のガードレールやガードパイプの有り難みを、実感したのであった。


(※伊勢・鈴鹿関、美濃・不破ふわ関、越前・愛発あちら関の3つの関所の事。

主に京から朝廷の反逆者が、東国に逃亡するのを防ぐと同時に、東国からの反乱軍を防ぐ防衛目的も兼ねて設置された。

平安期末に山城やましろ国(京都府)と近江国の間に、逢坂おうさか関が新設されて愛発関が、三関の区分から外れる事になった)


「それにしても天気が変わり過ぎだろ?ホントに鈴鹿峠は。」

「まぁ、昔っから鈴鹿峠の天気の移ろい易さは、結構有名だからなぁ。

大体の山道や峠道は山頂を越えて、上りと下りの境目で天変し易いのに、鈴鹿峠は上りも下りも場所に拠って急変するから、険しさと天変で「三関でも随一の難所」と、謂われるぐらいだしな小吉坊よ。」

ウンザリとボヤく小吉に対して、苦笑気味に鈴鹿峠の特徴を話す長康。


「はぁ、こんなんだったら桑名から街道として利用されてる、八風はっぷう千種ちぐさの峠道を越えて近江に出た方が、良かったんじゃないの?」

愚痴りつつ、交通の便が良さそうな感じのする、別ルートを選択しなかった事に対し、疑問符を浮かべる。


「阿呆、八風や千種街道は伊勢商人や近江商人の、強い息検問所が掛かっとる場所だから、運んどる物を下手に勘ぐられると、あっという間に六角家とかに話が洩れて、要らぬ厄介事を招きかねんから敢えて避けとるんじゃ。」

小吉の愚痴を窘める口調で、


「それに比べてこっちの鈴鹿越えは、伊勢側の関守・関家と近江側の公家勅使くげちょくしの警固役兼接待役・山中やまなか家両家に依る、武家管理じゃから金さえ握らせれば、根堀り葉掘り細かく詮索される事が無いからのう。

先日会うた連中山賊も、五月蝿うるさくないこちら側を利用しとるしな。」

敢えて利用した理由を述べる。


「う~ん・・・なる程、鈴鹿峠は有る意味裏道みたいなモンですか。

それにしても殿、色々と詳しいっスね?」

「うん?まぁな。

今川家との田楽狭間戦前に殿が、将軍家に謁見をする為に京の都に上洛された際、儂も殿の賄い方台所奉行として同行しとるからな。

言うても大半は、殿や供の者が言うとった事の又聞きじゃけど。」

頬を掻いて照れ笑いする。


「へ~・・・あれ?そう言えば今回、将軍家を無視してるけど良いんですか?

朝廷から任じられた王城鎮護おうきちんご役である足利将軍家を介して、武家の使者は朝廷に接触するのが通例だった様な?」

うろ覚えの前世知識で疑問点を尋ねた。


「お前もやけに妙な事を知っとるな。

基本的に官位任官とかの公事の際には、将軍家を通じて朝廷に働き掛けて貰うのが通例じゃが、今回は山科卿の嘆願という私事じゃから、別段気にせんでもええしそれに・・・。」

一旦言葉を切り、キョロキョロと周りを見回して、憚る様にコソッと、


(殿御自身がそれはそれは大層、足利将軍家を嫌っておられるからのう)

衝撃的な話を小吉に耳打ちした。


「えっ、そうなんですか?」

「ああ、殿が現公方くぼう(将軍)・義輝公に謁見した際、成り上がりの田舎者扱いをされて、冷たくあしらわれた挙げ句、織田家の主筋である斯波家から、殿が実力を以て国主の立場を奪った事を、「君臣の分をわきまえよ」云々とぶつくさ言われたらしい。」

「それは又・・・。」

ノッブの性格を知る側からすれば、そりゃそうなるわと絶句する。


(確か徳川家康も、将軍家に三河守護職を貰おうとして、主筋の吉良家を下剋上で追い落とした事を、激しく非難されて責められたっていう、似たような話が有ったよな?

現実を観ずに理想つーか誇大妄想に取り憑かれた、出来もしない将軍家の復権を夢見る、懐古主義者って感じだよな義輝って。

聞き知った限りだと)

秀吉の話を聞き、脳内思考で想像する。


「しかもそう言って、殿には偉そうに言っておきながら、当の公方は将軍家の「君」である、満足に暮らせぬ畏き辺りのお方の窮状は、まるで無視で見て見ぬふりしてかえりみず、自身は庭園付きの優雅な御所暮らしをしているという、「※1不忘敬ふぼうけいならぬ忘敬」っぷり。

その上に立派な御所を作ってくれ、生活の保障までして、「臣」の三好家とは度々揉めて、再三に渡り戦を起こしている「※2見利忘義けんりぼうぎという忘恩」を、他ならぬ自身がやらかしている体たらく。

殿は「どの口が言うか慮外無礼・無遠慮の極み者が!」と、激しく罵っておられたからなぁ。」

呆れ果てた表情を浮かべて語る。


実際に後年、義輝の実弟・義昭を将軍に擁立したノッブは、義昭が好き勝手にやらかした事にブチ切れて、箇条書きした詰問状を送っているのだが、その中の一文に「義輝が早死にして非業の死を遂げたのは、朝廷を軽視して蔑ろにしたからだ」と、生前の義輝の行状を明確に非難しており、暗に「お前もそうなりたいのか?」と義昭に警告している。


(※1敬いの心を忘れない事

※2自己の利益や欲得に目がくらみ、道徳や物事の道理、社会的責任を忘れてしまう事)


「ものの見事に二枚舌、言行不一致を体現してますね~それは。」

「本当にな。

殿が最も嫌う性質の人間だからな公方は。

それにバカ正直に将軍家を介しなんぞしたら、下手せんでもしれっと横領されて、禁裏に渡るのは1割も無いだろうしのう。

勝てもせん三好家との戦備という、無駄遣いに使われるのがオチじゃわい。」

「最低のクズですねそれ将軍。」

ゲスからクズ認定をされる将軍。


「もうそれなら山科卿と言うか朝廷の方も、実力者の三好家に諸々出資して貰った方が、よっぽどマシなんでは?」

「まぁ、それを実行した結果「永禄改元えいろくかいげん騒動」が勃発して、余計にややこしくなったから、面倒事にしたくないんじゃろ山科卿も。」

溜め息混じりにボヤいた。


「改元つったら年号を変える事ですよね?」

「そう、今の永禄になっとる前は弘治こうじだったのじゃが、本来は禁裏と将軍家が談合して年号を変える通例を、公方が京に居なかった上に必要経費を出さなかった為、禁裏が京の支配の実権を握っとった、三好長慶みよしながよし(「ちょうけい」とも)と談合して決めてしまい、公方を無視して全国に発布した事で、全国規模で揉めたんじゃ。」

「はい?改元するだけで全国規模に?」

全く理解が及ばない小吉。


「公方自体が改元が有った事を知らず、弘治の年号で手紙を諸大名に送っていた事で、全国規模で赤っ恥を晒してしまい激怒、「儂に談合もしていない改元など無効だ!」と、弘治年号を使い続けて朝廷に反発。

反発する公方に今度は朝廷が激怒して、公方を「朝敵」に認定しようと画策。

諸大名も弘治を使う者と、永禄を使う者に分かれるという、謂わば全国規模で「将軍派」と「朝廷派」に、割れてしまった騒動じゃ。」

「・・・なんかバカバカしい話っスね。」

しょうもない事でわざわざ揉めんなよと、呆れ顔になる。


「全くな。

そんで思わぬ事態に三好家が驚いて、事態収拾に右往左往奔走した結果、「自分に非があった」と長慶が認め公方と「和睦手打ち」という、三好家側が有責即ちで騒動は終息。

公方が帰京する切欠になったって訳じゃ。」

「う~ん・・・良く三好家は、自分から泥を被りましたねそれ。」

一方的に損をする状況で、実質的な負けに等しい和睦に持ち込んだ事に首を傾げる。


「そりゃあのう。

どっちに転んでも三好家にとって結局の所、大痛手大ダメージにしかならんからよ。」

「大痛手?世間的に悪評を買う以上に?」

それ以上の政治的損失になるのかと驚く。


「朝廷に味方して公方が朝敵に認定されれば、曲がりなりにも公方を擁立しとる三好家も、周囲から「朝敵を擁立したろくでなし」と、同じ目線で観られて巻き込まれるし、かと言うて公方に同調すれば、今度は「朝廷を蔑ろにした裏切り者」と朝廷の怒りを、自分が買って朝敵になりかねん。

それなら自分が進んで「己が全て悪かった、どちら朝廷・公方にも非が無い」と泥を被る方が、余程マシじゃからなぁ。」

首を左右に振って肩を竦める。


「うわぁ・・・目上同士の子供じみたケンカに巻き込まれて、責任と非難だけ貰ったって訳か三好家の面々は。」

「まぁそうなるのう。

そういった経緯で、将軍家は三好家と朝廷に敵意を増し、朝廷は将軍家と三好家にわだかまりを増し、三好家は将軍家と朝廷に隔意を増す様になり、三者が三者共に険悪化してしまう結末になった訳だ。

そんな現状じゃから三好家も応じぬし、山科卿も言えぬじゃろうて。」

バカバカしいと肩を落とす秀吉。


「そう言う訳で関わらぬのが吉じゃ。

ほれ、宿場に着いたから一休みをするぞ。」

「「ははっ。」」

早速宿屋に向かう一行であった。


そして土山宿で羽を休め、水口みなくち宿を経て温泉で有名な宿場と、同名の草津くさつ宿で骨を休め、逢坂を越え入京を果たしたのであった。


そして・・・


「え?・・・これが京の都・・・?」

唖然とした表情を浮かべる小吉。


メインの目抜き通りこそは、そこそこの賑わいをみせているが、目線を少し奥に這わせば焼け落ちた家屋、明らかに破壊されて倒壊した家屋が、あちらこちらに点在し、路地裏には無気力に壁に背を預けて、老爺とも老婆とも判断の付かない、痩せ細った餓鬼の様な者達が屯していた。


(コレが京都?おいおいおい!?

前世のニュース映像で観た、紛争地域の都市とか、終戦後の日本の都市部みたいに、めっちゃ荒廃してるやん!

伝説的暗殺拳伝承者が現れてそう・・・)

核の炎に包まれた事後と言われても、信じてしまいそうになる。


「あ~やっぱりそういう表情になるわな。

儂も最初上洛した時には、余りの荒廃っぷりには唖然茫然としたモンよ。」

解るぞ小吉と、ウンウン頷く秀吉。


「将軍家とか三好家とかは、都市管理をしていないのですかコレ?」

「ああ、殆どしとらん。

元々応仁の戦乱以降も、代々将軍家は身内同士で次期将軍職を巡って、戦を起こすのに夢中でほったらかし。

三好家を含む歴代の実質的な支配者達も、「君臨すれども統治せず」で守り難い京には在京せずに、近場の摂津せっつ国(大阪府)とかに本拠を構えて、半ば放棄しとる。」

天を仰いで嘆息する。


「本当に末世ですねぇ。」

「まぁコレでも儂が上洛した時に比べると、大分マシになっとるがな。

前の時には辻々つじつじに大きな円形の穴と藪が有って、大層悪臭を放っとったからのう。」

「悪臭ですか?」

「ああ、死体を棄てる投棄場代わりのな。」

「・・・うぇ。」

生々しい秀吉の実体験話に、酸っぱいモノがこみ上げる。


「とりあえず山科卿にブツを届けて、サッサと堺に向かおうぞ。

此処は治安が悪すぎて、泊まるには落ち着かんしのう。」

サッと馬首を巡らせて、貴族が住む区画に向かって動き出した。


そうこうしていると、


「~~~!~~~~!?」「!~~~?」

遠目に籠を背負った姉妹っぽい女性達と、複数のボロボロの胴丸どうまる(簡易鎧)を身に着けた、オッサンズごろつき共が揉めているのに出くわす。


どうやら数を頼んで気が大きくなって、女性達に絡んでいる模様。


「殿。」

「うん?騒動に首を突っ込む事はせんぞ。」

「結構な美人さんですけど?」

「長康!行って参れ!」

即座に決断を下し、ぱっと見は同類のオッサンズを向かわせる。


難なく制圧した頃合いを見計らって、


「大丈夫ですかな?麗しきお嬢さん方?」

ええかっこしいな気障きざな態度で、紳士的に安否を確認するエロ猿。


「・・・はい、ありがとうございます?」

「ぶっ!?・「ああ、スイマセンねウチのモンが恐がらせて。」

下心満載のエロ猿の頬を手で押しのけて、警戒心バリバリのお姉さんに対し、ペコペコと頭を下げる小吉。


「ナニすんじゃいテメェ!?」

奥方様姉さん報告しチクりますぞ?」

「・・・・・・。」

一撃必殺の殺し文句を食らい、しおしおと体をしぼませ、無言でスッと下がる後の天下人。


「え~と、大丈夫ですか?

道中不安ならお送りしますけど?」

「あ、いえ、家がすぐそこにありますので、大丈夫にございます。」

子供の小吉には警戒心を解き、キレイな瓜実うりざね顔を綻ばした。


(う~ん、野草摘みかなんかの帰りで、野良着作業服こそ着ているけど人品卑しからず、何処ぞの子女って感じだな。

この時代の貴族の子女は、大概は貧しくて飢えを凌ぐ為に、野草や山菜採りをしていたらしいから、この人達もその類だろうな。

下手な詮索は野暮ってモンだな)

なんとなく察する。


「左様ですか。

では我々も洛中の羽林家中級貴族に訪ねる所用があります故、コレにて失礼仕る。」

ぺこりと姉妹(?)を貴族家の子女と見なして、出来るだけ丁寧な態度で応対し、未練がましくしている秀吉に、「早よサッサと乗れや」と騎乗を目線で促した。


「羽林家?あの私、洛中住まいで地理に詳しいので、お礼がてら案内をしましょうか?」

「はぁ、それはこちらとしてはありがたいのですが・・・。」

「どちらのお家に御用でしょう?」

探る様な感じで小吉達を見つめる。


「え~、山科言継卿宅を訪ねる所です。」

「・・・お義父もう様に御用ですか?」

今まで姉(?)の後ろに隠れていた妹(?)が、目を見開いて驚いた表情で、ポツリと呟く。


「へっ?お義父様?」

「申し遅れました私、山科家の家人でこちらの言継様の御嫡男、言経ときつね様の御正室・阿弥あや様の侍女じじょ(側近)を務める者でございます。」

籠を背負ったまま、ぺこりとお辞儀する。


(はい!?どうみても俺より幼いだろ!?

利家のオッサンといい殿といい、直立不動・断崖絶壁のヒンヌー好きのロ○ばっかかよ?この時代の野郎は!?)

寧々姉さんに聞かれたら、確実に「死」を呼ぶ台詞を脳内で叫ぶ。


「へぶっ!?・「コレはいかい失礼仕った!

某、尾張は織田家家臣・木下秀吉と申す者にございまする。

此度は卿の御要望に御応えすべく、殿の命にて卿の許に馳せ参じた次第。

何卒卿にお取り次ぎをお願い申しまする。」

今度は小吉の頬を押しのけ、秀吉が前に出てハキハキと口上を述べた。


そうして阿弥と侍女の案内で、芸術が爆発してそーな絶妙に屋根の傾いた、廃墟一歩手前のボロ屋敷に辿り着き、即座に取り次ぎが為されたのであった。


「主・織田弾正忠の命に依り、畏き辺りのお方の窮状を御救いすべく、生々しく畏れ多けれども現金をお持ち致した。

どうか卿より御笑納頂ける様、禁裏に御取り成しくださいませ。」

「おお、弾正忠殿が・・・ありがたや、ありがたや・・・本当にありがたい。」

秀吉に向かって手を合わせ、拝む様に感謝の意を表した後、尾張が有る方角に向かって座ると、何度も頭を下げて感謝の意を表した。


(ふ~ん、この爺さんが戦国時代随一の勤皇家・山科言継てか・・・)

涙を流して感謝している、色黒で痩身の言継を見つめる。


多数の貴族が生活苦に耐えかね、朝廷を離れて各地の大名家を頼って居候する中、只唯一と言って良いぐらい朝廷の復興に東奔西走、尽力した人物が山科言継である。


各地の大名家を訪れて、自身が持つ教養(和歌等)を教授する傍ら、御所修繕費や朝廷の行事=祭祀の費用を集めて回り、織田信秀や今川義元等々、大名から資金調達を成し遂げた、財務大臣と言うよりも凄腕の外務大臣といった人物であった。


「ままっ、山科卿、それぐらいに・・・。

山科卿へのお土産もございますので。」

荷車から大樽に入ったお酒と、干物といった酒のさかな(ツマミ)を見せる。


「おほっ!?これはこれは忝い!

早速頂戴致そうかのう。

儂も織田殿の近況等を聞きたい故、こちらに来やれ木下殿。」

に愛おしげに飛び付くと、匂いを嗅ぎつつ頬ずりした後、樽を担いでキラキラと目を輝かせて手招きする飲兵衛怪力爺


秀吉が言継に引っ張られた引き摺られた後、家人から控えの間(従者待機所)に案内されると、明らかに唐風中国の装いをした先客がおり、所在なさげにしていた。


(うん?明の人か?・・・チャ~ンス)

思わぬ所で出会った好機に歓喜し、ゴソゴソと行李こうり(小型バック)から数枚、自作した絵を取り出した後、


「ニ~ハォ~?」

にこやかにフレンドリーに話しかける。


「うン?ニーハオねボーズ。

わたシ倭国語日本語タしョーわカるカら、倭国語でどーゾね倭国ボーズよ。」

わりと流暢な日本語を話す明人。


聴けば薬種(薬の原料)を主に扱う貿易商人の様で、堺の会合衆首脳陣の紹介で医術を家業とする、山科家を訪れた模様。


「ケど全然ダめね。

こんナオンボろ屋敷に住んでル自体、アイヤーと思たケどアんの定よ。

フツー貴族っテ、お金持ちなノがとーゼんと思てタのに・・・倭国おカしーヨ。

ホんで何ねボーズよ?」

愚痴りつつ、小吉を問いただした。


「コレって、そちらさん明国で売れますかね?」

ススッと一枚の絵を差し出す。


「うン?ドれドれ・・・ほう、これハこれハなカなカ・・・こノ手の好事家こうずか(マニア・ファン)に売れルと思うねボーズ。」

「じゃあコレは?」

「!?コレをわたシに売るねボーズ!」

目の色を変えてせがむ明国商人。


丁々発止のやり取りの後に、現在堺に訪れている他の明国商人を紹介する約束で、ていと名乗るオッサンに絵を数枚譲る小吉。


(ウッヒッヒッヒ・・・棚からボタ餅で思わぬ伝手が出来たわ。

描き溜めてたヤツを売り払って、銭儲けをさせて貰いまひょか!)

皮算用を弾くゲス。


こうして金儲けにひた走る小吉であったが、それが思わぬ騒ぎに発展するとは、思いも依らぬ事であった。


                 続く






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