どちらが先か……。

 教室で幼馴染が幼馴染に告白しているのを見てしまった。

 見た感じ恐らくこの告白は受けるだろう、そして二人は恋仲になるのだろうな。

 この瞬間自分の中で後悔の念が押し寄せてくる、なんで先に告白をしなかったのだろうかと。

 私たち三人は幼馴染だ、昔からの知り合いで、その中で私が始めに好きだと実感した。

 でも関係を壊れることを恐れた私は何もできずにいた。その結果がこれなのだ。

「あれ二人ともどうしたの?」

 何も知らないふりをして教室に入り、二人がカップルになったことを知った。

「そっか、幸せにね」

 私は逃げるようにして教室を出た。

 少し進んだ踊り場まで行ったところで、力が抜けてしゃがみ込み、そのまま顔を覆った。

『私が先に好きだったのに』

 この思いを胸に押し込み表層で二人の幸せを願い、空が暗くなるまでその場にいた。


 踊り場から幼馴染の鳴き声が聞こえる。

 先程の告白、誰もいないと思ってしてしまったが、どうやら一番聞かれたくない人に聞かれていたようだった。

 告白したことに後悔はなかった、でもそれで幼馴染を傷つけるけることになるとは。

 いや、そうなると知っていた。だって彼女が先に好きになっていたことは知っていたのだから。

 それでもこの気持ちを抑えることができなかった、彼に想いを伝えられるずにはいられなかった。

 『でも彼女がこんなに泣くなんて』

 予想だにしていなかった事実。それでも彼を手放したくはないと思った。

『ごめんなさい。その代わりに、彼を幸せにするから』

 泣きじゃくる彼女の声に対し、私は心の中でそう決断した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る