【短編】銀色の魔法はやさしい世界でできている 『天下無双・ダンス・布団』(KAC20252)

🎩鮎咲亜沙

【短編】銀色の魔法はやさしい世界でできている 『天下無双・ダンス・布団』(KAC20252)

「うーん、どうしたもんかしらねえ?」


 悩める聡明な美少女⋯⋯それはこの私、ルミナス・ウィンザードだった。


「なに悩んでるの?」


「あーアリシア様。 えっとですね⋯⋯」


 まあいい、ひとりだと煮詰まっていたからここは発想が異次元な銀の魔女様にも考えてもらおう。


「こんど帝国で『天下無双舞踏会』という催しがありまして」


「なにそのイベント?」


「ようするに貴族の子女が集まってのダンスイベントです」


「なるほど⋯⋯でもなんでそんな物騒な名前なの、そのダンスイベント?」


「私の偉大なる祖先クロエ様の発案した由緒正しき名称ですが⋯⋯なにか?」


「あ、うん、ごめん。 よくわかったから、ほんとごめんルミナス」


 まあたしかによく指摘される変な名称だけど私は気に入っている!


「それでですね、毎年そのイベントでのダンスで素晴らしかったカップルには皇室からの贈り物が贈られるのですが⋯⋯今年はなんにしようかと?」


「なにがいいんだろ?」


 そう何も答えられない使えないアリシア様だった。

 まったくこの人は魔法以外はわりとポンコツでいらっしゃるから期待はしていなかったけどね。


「ルミナス、そのイベントの優勝者ってたいてい婚約者同士よね?」


「そうよ、フィリス」


「じゃあ寝具なんてどうかしら? いま結婚前のお兄様とネージュ様とリオン様が楽しそうに新しい寝具選びをしていたから」


「なるほど! それはいいわね!」


 しょせんこのイベントで優勝するカップルなんてそのあと夜は、しっぽりお楽しみに決まっている!

 だったらそのために最高の布団でも贈ってやればいい!


 この考えは最高のアイデアだと思った!

 ⋯⋯この時はそう思ったのだ。


「布団か⋯⋯ならあれを使って最高の『魔女布団』でも作ろうかな?」


 そう言いだしたのはさっきは役立たずだったアリシア様だ。


「ねえミルファ、あれ⋯⋯どこやったっけ?」


「アレとは先日のトリの降臨のさいに大量に出た羽毛ですね! 持ってきます!」


 そのミルファが持ってきた大量の羽毛でアリシア様はさっそく布団を作ってくれた。

 ほんとにこういう物を創らせると最高の仕事をする!

 さすが銀の魔女アリシア様だ!


「うわーふかふか!」


「肌触りがすべすべで!」


「なんてあたたかい⋯⋯」


「このくらいそう大したものじゃないよ」


 まったく謙虚なアリシア様だった。

 しかしこの布団は確かに最高傑作!


「よーし! これで天下無双ダンスイベントの賞品の布団が手に入ったわ!」


 こうして今年も無事に開催された『天下無双舞踏会』は賞品のうわさを聞き付けた令嬢たちの『ダンスバトル』の戦場となり熾烈な『お布団争奪戦』になるのであった。


 ⋯⋯そして私は皇帝であるお母様に怒られた。

 ⋯⋯⋯⋯げせぬ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【短編】銀色の魔法はやさしい世界でできている 『天下無双・ダンス・布団』(KAC20252) 🎩鮎咲亜沙 @Adelheid1211

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ