「母さん、オレ 予備校行こうかな 母さんとこの…」




母親は祖父がやっていた画廊を細々と続けながら向かいの美大の予備校でときどき講師もやっている




「どういう 風の 吹きまわし?」


母親はくるりと振り返って目を丸くした




「いやさ、画廊の仕事手伝うようになって


絵に、興味がわいたっていうか、そっちのほうも面白いかなって」




母親はクスっと笑って


「いいんじゃない?」




そんな風に


よくわからない理由と明確な目的で(ハルに近づきたかったから)


美大の予備校に通うようになった




きっと


母親も父親もぼくがなにかしていた方がマシだと思ったんだろう


せめてどこかに居場所がある方が今よりはきっとマシだと

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