第一話

 夜も更けてきたころ__

 「早く来いよ!電車、間に合わなくなるぞ!」

少年が急かす。

 「うわっ、やべ!」

その声に現状を知らされたもう一人の少年が車内に駆け込む。

が勝負だというのに少年はまだ走っていた。

「セーフ、セーフだ。」

「アウト。走んな。」

ガラガラの車内に二人のみの話し声が聞こえる。

この時間は相も変わらず誰もいない。


 下場しもば れん。二度見、三度見はするであろうイケメン顔。すらりと伸びた綺麗な脚。腕も細いものの、しっかりとまんべんなく筋肉がついており、『細マッチョ』って言われるのもしかたがない。性格はクズだ。

 対して長い前髪、首元まである長い後ろ髪。時折見える目は少し鋭いが、瞳は優しさを帯びていた。

 くだき 風斗ふうと。連が、ガワがイケメンだとするならこちらは性格イケメン。困っている奴はほっておけないタイプ。無自覚にクサいセリフを吐くが、助けられた者にはブッ刺さり、何人たらしてきたんだか。

しかし、本人からにじみ出る根暗オーラで話しかける気すら消されるそうだ。

 ちなみにさっきの勝負なのだが風斗がコッソリ裏道を使い、駅へと素早く出たのだ。


 二人は電車に揺られながらボーとしていた。まぁ、風斗は参考書を読んでるけれど。

 駅に着き、自転車に乗り、風斗は家に即帰宅。後ろから連も付いてくる。

 連の親は事故で亡くなり、この家に住んでもらうことになった。風斗も連も風斗の父の圧力で剣道をやっている。


それぞれ風呂に入り、着替える。連は課題を取り出して何問か解いたが、飽きたのかすぐしまった。電気を消して、布団にもぐる。


「おやすみ~」

連はあくびをしながら。

風斗は、

「……。」

話す気どころか挨拶を返す気すら無いようだ。


このまま寝て、おはよう!となればいいのだが、


その夜、二人は夢を見た。


正確には夢ではないのかもしれない。


けれども、明日の朝から二人は「運命」の流れに引き寄せられていく___

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