第二話 依頼

「あの、えっと... 浅田優 ...です...。その、お願いします...。」


 浅田優、それが今回の依頼主だ。

 依頼内容を要約すると、友人の吉田正人 (よしだまさと) が突然音信不通になり、警察に届け出たが見つからなかった。要は失踪である。

 その後、友人の居場所に関する手がかりを得た依頼主だったが、残念ながら取り合ってもらえなかったそうだ。


「それで、これがその手がかりですか....」


 目の前にはホラー系サイトのとある記事。

 <ほら〜なウワサ!都市伝説スペシャル!>

 とデカデカと書いてある。なんだかなあと思いながら記事を読む。


「神隠しの家、ここに吉田さんがいると?」


「はい...。それ以外、考えられないんです...。丁度、このサイトの話をしたばかりで...正人 ホラーにハマってたから...きっと神隠しに...」


 今にも消え入りそうな声で依頼主-浅田さんが話す。

 正直に言うとバカバカしいの一言につきる。

 そもそも神隠しなんてものは山で遭難したヤツや、何らかの事情で捨てられたヤツの事を、神のせいと称し誤魔化しているだけであり、

コウノトリが赤ん坊を運んでくる話の仲間だ。

 可能性があるとすれば、誰かに誘拐されたか、はたまた家出か、そのどちらかだろう。

 

「それで、この家は何処にあるんですか?」


 気を取り直し質問を投げかける。

 サイトには××県〇〇市としか書いていない。捜索するにしても、どこにあるか分からないのでは


そこまで考え一旦思考を止める。まさか...


「どこにあるか分からない?」


 コクリと浅田さんが小さく頷く。


 思わずため息をつきそうになる。

 どこにあるか分からない?そりゃあ取り合って貰えないだろう。

 それで友子に捕まったというわけだ。成程、物探しと言えば探偵。さぞ捕まえやすかった事だろう。

 ふと浅田さんを見ると少し怯えている様子だった。いかん、顔に出ていたか。

 すると、気まずい空気を断ち切るように友子が机を叩いた。


「消えた友人を想うその気持ち、しかと受け取りました!場所が分からないのが何だってんですか!!こちとら探偵!探し物なら任せて下さいよ!ねえ、はすっち!」


 よく人任せでここまで威張れるものだ。

 友子の顔には、断るなよと書いてある。

 言われるまでもない、こちとら生活がかかっているのだ!


「任せて下さい!正人さんは必ず我々が見つけ出して見せます!」


 俺は精一杯の笑顔で答え、料金の説明へと移るのだった。





*********************



 浅田さんと連絡先を交換してその日は解散となった。

 俺は友子にこっぴどく叱られた。依頼人を不安な気持ちにさせるとは何事かと。

 大人になってこんなに叱られたのは初めてだ。しかも年下に。情けない。

 しかし友子の奴、あんなに怒らなくてもいいじゃないか。カルシウム足りてないのか?

 

 そんなこんなで俺達の調査が始まった。


 進展があったのは、調査開始から2日後。

 浅田さんから住所が届いた。なんと神隠しの家のものと思われる住所を特定したとの事だった!


 探偵として自信に少し傷がついたが、進展したのは良い事だ!

 友子と一緒にピザパーティーを開いた。

 浅田さんも誘ったが、来ることはなかった。



 その日から浅田さんは音信不通になった。

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