第36話
「勝村、どこか行きたいとこある?」
私の趣味に合わせてくれたみたいだし、次は勝村が興味あるとこに行きたい。
「こっち。」
行きたい方向を聞いたわけではないんですが。
しばらくついていくと、なんだかコーヒーの匂いがしてきた。そこには、隠れ家みたいな本屋があった。めっちゃ葉っぱついてる。
「おしゃれだねぇ、こんな本屋があるなんて知らなかったよ。」
「マップにも書いてないんだよ。」
「そんなものが商業用施設に‥」
勝村は目的のコーナーに歩いていく。かと思いきやビビッと立ち止まって、
「…別行動にする?」
と聞いてきた。
ありがとう。私はラノベしか読めない。きっと勝村はそれに気づいていたのだろう。そして勝村はラノベ読まない。
「うん、そうしよう。」
「気が済んだら探して合流しよう。」
「分かった。」
勝村は実用書の方に入っていった。私はラノベを探して端から見てまわることにする。
イオソには三階にも本屋がある。
そこは、児童用書店なので、ラノベはそんなに多くない。ここはもうちょっと多いのではないかと期待していた時期が私にもありました。
ない。
全部見てまわったが、確実に無い。
この雰囲気の書店にラノベは置かないか。
勝村を探すことにしよう。1人で興味の無い本見るよりは面白い気がする。
勝村はまだ実用書のコーナーにいた。立ち読みする横顔かっこいいな。でもなんか、見えない尻尾がブンブンしてるような感じがする。どこか嬉しそうな感じがする。表情に出てないけど。
「かつむらぁ、ラノベなかったぁ。」
慌てて本をしまう勝村。
「…いったいなに読んでたの?」
「いや、別に‥」
『最高の一日はコーヒーを捨てることからはじめよう』
『出来るビジネスマンは最初は適当』
『人格を売る。』
『人格は買うもの。』
『気にしなければ無傷』
『土下寝がベストか』
『武士道』
いっこも怪しいのはない。いや、まあおかしいのはあるが、隠すようなもんじゃない。
「なに読んでたか教えてくれても良いじゃないの。」
「これ。」
『地政学入門』
「まともな本あったんだね。」
「…ノーコメントで。」
私たちは、そのあとのんびり全体を見てまわったあと、お昼でもと、二階に降りることにした。
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