第18話 熱
talked by:平倉
勝村は毎朝早く来る。
なので今日は私も早く家を出る。
自転車を拭く。朝露に濡れてる。
朝はひんやりしてる。私はいつも長袖だけど、寒い。いつもより急ぎ目にペダルをこぐ。ぎり7時台についてしまった。でも、教室は開いてる。早いな。勝村。
教室の後ろ扉をあけようとすると、鍵がかかっていた。中から何も反応がなかったので、前から入る。
窓際の、一番前の席。
勝村の席はそこだ。いつもは読書しているが、今日は机に伏せている。今日も半袖。
まぁ、急いで話しかける必要もないので自分の席に座る。勝村の右の列の5番目。
ふたりとも班長なので、一緒の班にはなれない。けど近い席になれたのは、私の日頃の行いの成果だろう。
朝早く来なくても、眺めようと思えば眺められる。まぁ、私は、優等生なので先生の方を向いて授業を受けるのだが。
連絡帳も書き終わって、まだ8時5分。
あと、10分は誰も来ないだろう。
暇なので、勝村の前にまわる。手首に昨日の跡がある。隠すつもりがないようだ。そっと撫でる。
起こすつもりはなかったが、勝村は顔を起こす。
その顔がいつもより赤く、いつも以上にボケーっとしてる。
昨日で風邪を引いちゃったのかな。
思わず、
「大丈夫?」
と聞くと、
「・・・。」
何も言わずにうなずいた。
大丈夫とは思えず、勝村の額に手を当てる。熱い。
「…!」
ボケーっとした勝村に軽く手首をつかまれる。
そのまま、勝村の首に押し当てられる。ここも熱い。そして、柔らかい。
おでこの皮膚に比べたら、だいぶ、柔らかい。
生存にかかわる部分なのに、どうして人間のくびの皮膚は柔らかいのだろうか。
空いている手の、人差し指の第2関節付近で勝村の首を、猫にするように撫でる。
勝村はビクッっと反応したあと、力を抜いた。目をつぶっている。すんごい猫。
…今日これで大丈夫かな?
普通に6時間、授業受けれるのかな?
「勝村、保健室、いく?」
静かに首をふる勝村。
「…まだ、頑張れる。」
と言いながら、弱々しく微笑む。
ぬぁんでここで微笑むのさぁー!!?
いっつも微笑んだり滅多にしないくせに!と、心の中で叫んでしまった。
そして、「頑張れる。」可愛い言い方するな~。もぉ~
10分ほどたっていたようで、クラスメイトが近づいてくる気配がした。
私は、名残惜しかったが、
「起こしちゃってごめんね。もうちょっと寝ときな。 ダメそうならすぐ言うんだよ。 ‥じゃあ。」
と言った。勝村はうなずき、伏せた。
指に感覚が残っている。
冷え症でよかった。
冷え症じゃなかったら、こうなってない。
朝早くきてよかった。
朝早くきてなかったら、こうなってない。
自分の行いの成果をかみしめた。
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