第12話 手錠

side:山下

(いや、なにしてんの!?)

優は勝村を抱き締めている。

そしてふたりとも寝ている。

(人がいない間に、人の家で、ラブラブチュッチュしてたのか!? ファッ!?!?)

と心のなかで叫びつつ、揺さぶる。

勝村だけが目覚める。


「…なんで抱き締められてるんだろう。」


えー!? 勝手に? 寝てる間に?

抱いた…ってコト?


私はいまどういう気持ちでこんなに心のなかでさけんでるでしょーか!?



…取りあえず起こすか。

優はねぼすけさんだ。全然起きないし、寝ぼけまくるから先に勝村の手錠をはずし、風呂場へつれてく。手首に跡がのこってて、色んなひとに、どうしたの、ってきかれそう。なんて答えるんやろう。長袖にするんかな。明日寒いらしーし。


さて、起こすか。

不思議なことに、優には、まえと同じような気持ちはわかない。


揺さぶる。揺さぶる。揺さぶる。

ようやく、目を開けた。私をみた後、自らの手首に手錠がないことに驚いた顔をしている。



 かつて、手錠は、わたしと優の間で、『なにもしなくていいよ。』のサインとして、触れ合うときは大抵つけていたものだから。

きっと彼女は、そのときの夢を見ていたんだ。

 そしていま、寝ぼけていた頭が冴えてきて、いまを思い出したようだ。


「勝村は?」


一言目、わたしのこといってくれたらな、からかえたのに。

そう、からかえるだけの心の余裕が出来た。


もう大丈夫。未練はない。


「私たち、これからは友達だよね?」


と尋ねてみる。


「‥うん。これからは、って?」


と不思議そうな返事が返ってくる。

そっか、わたしたちは友達だったんだ。ちゃんと付き合っていた訳じゃない。だらだら恋人のようなことをしたりして、わたしの気持ちが暴走しただけだ。


「ずっとだよ。」


自分の声か優の声か、

どちらの声か分からなかった。


そこから、国語の教科書のキャラをいじったり、噴水の曲線について語ったり、昔のように、純粋な友達として、話した。

とても楽しくて有意義だったと思う。


あっ、ゆーいぎだなんて、わたしのキャラじゃないや。誰の影響かな。

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