第9話 再会
side:勝村
雨で濡れたスカートが、走っているとずれていく。大きくなることを見越して大きめを買ったことを恨む。
平倉さんは何も言わない、ただ全力でどこかへ私を引っ張っていく。
こんなに必死で人のために何か出来る人がいるんだな。
突然立ち止まる。そしてインターフォンを押す。そのとなりに見える表札に、目が吸い寄せられる。「山下」
おー、山下さんか、あの山下さんかなー
side:山下
なんか、全てがアホらしい。
みーは何がしたかったんだろう。
したことといえば、勝村をむりやり捕まえて、びしょびしょグズグズにして、自分のダメさを叫んだだけだ。言いたかったはずのこともうまく伝えられず。 何が言いたかったのか忘れたし。もうっ。
勝村を撫でた指だけが最後まで目的を達成して満足そうだ。 「私様はあれだけ人を気持ち良くできるんだぞ♪」 とでもいうようだ。恨めしい。睨んでおく。
…まてよ。 そういえば、私、手錠はずしてないな? 途中から手錠をつけられて馬乗りされてる人とは思えなかったから忘れてた。 いや、言い訳はよくない。
スッキリしたような気がして走って帰ってしまった! うわ、戻るか? 戻ったところで? いや、戻っても損はない! 雨だけど! うちは立地最高! 早速部屋着から制服に戻そうとする。上を脱いだところで、
ティレレン ティレレン ティレレンティレレン
我が家のインターホンがなった。
宅配便かな? はっは(母)かな? あねん(姉)かな?取りあえず、脱ぎかけた部屋着を着直す。
下に降りて、インターフォンを覗くと、
「!!! 勝村!? なんで!?」
申し訳ないよりもなんで? が勝つ。部屋も汚いし、家教えてないし!
取りあえず、昨日、コインランドリーで乾かしたフワッフワッのタオルをもって玄関へ走る。道中に落ちているものは全てリビングに蹴り飛ばす。
ぐっ、角がいたい。涙目でドアをガバッと開けて叫ぶ、
「勝村! これっ、タオ…リゅ!?」
「やぁっ、久しいね。 美姫。」
「…夏油 すぐれる‥?」
勝村のつぶやきは私の耳には入らなかった。というか、入れなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます