第5話 体育

私は中学校の教員だ。担当は体育。

月曜日の1時間目は1年A組だ。このクラスには、私の百合好きを知っている、平倉 優と部活動で、「やる気がないやつは帰れ!」と言ったらほんとうに帰った、勝村 茶銀がいる。他は全く目立った行動をする子はいない。


平倉にはうっかり百合好きをばらさないように、一応口止めはしているが、百合の毒で社会的に死ぬのは避けたい。

勝村はシンプルに何するか予想できない。

よってこのふたりは注意深く見なければならない。しかし二人は一緒にいないので、いつもは首をいろんな方向に回して頑張っているのだが、今日はちがった。


勝村の髪を平倉がといている。

人と関わっているイメージすらあまりない勝村が、平倉の膝の上に乗っている。サイズ感尊い。勝村が気持ち良くて寝落ちしそうなのもポイント高い。

ふと、小さくてか細い声が聞こえた。


「銀さんはハイスペ不器用王子攻めだよね…公式との解釈不一致はしんどいっていうか、みーがみたいのは、このカプじゃない。」


「優さんには男子と付き合って後世に優さんの遺伝子を残して欲しい。」


過激派がいる…

ABC合同の体育なので、あまりの人数の多さに、名前は覚えてられない。

しかし、名札がある。山下と斎藤。


私はこのまましずかに勝村と平倉を眺めていたかったが、過激派がいるし、集合をかけなければならない時間だった。


 集合をかけると、勝村はすくっと立ち上がり、駆け寄ってきた。平倉は不満げだ。

こいつ寝起き良すぎるよな、うんうん、先生も見たかった。寝ぼけてるとこ。


こうして、この日から二人を見る理由が一つ増えたのだった。

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