第4話 特別
talked by:勝村
平倉さんは、小学校まで、くせ毛を腰の位置まで伸ばしていた。そして黒い太枠のメガネをかけていた。
中学校では、縮毛矯正、短髪センター分けで、細枠のメガネをかけていた。
私は人の顔全体が認識できずに、髪型や声、匂いで覚えていたので、そこまでの変化があったら気づけないはずだった。
しかし、あのとき、突然、顔全体を認識することが出来、つぶらな二重、控えめな長さの毛量の多いまつげ、透き通るような肌、鼻筋の通った鼻、常に口角の上がった薄ピンクの唇、まっすぐな顎のライン。
それぞれのパーツの美しさが噛み合い、オーケストラの演奏を聞いたような感動を覚えた。
とても美しいと感じた。
いや、目と目があった瞬間、美しいと感じるより先に、自分の瞳孔が開き、眩しくなった。
これが一目惚れなんだ。
一目惚れで世界が輝く原理はこういうことなんだと思った。
これをきっかけに、バラバラと私の中に落ちていた人々の顔のパーツが、それぞれ組み合わさった。なぜ認識できるようになったかは分からないけれど、顔が認識できるようになった。
だから、
私にとって平倉さんは特別な人だ。
だからといって、何か特別なことをするわけでもない。
ただ、自分の行動が彼女の喜びに繋がるのなら、精一杯やろうと思った。
入学式の挨拶なんて誰も聞いてないと思ってた。左隣を見ると、平倉さんは誰の話にもほほえみとうなずきを返している。
この人は、入学式という時の流れを区切るためだけの行事すら思い出や学びにかえてしまうのか。そう思ったことがやる気に繋がり、いつになく穏やかな気持ちで、最高の挨拶をすることが出来た。
感謝してもしきれない、感謝しても訳が分からないだろう。柄でもない。なので、静かに胸に秘めておく。
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