第3話 褒める
talked by:平倉
教室に戻ると、先程の挨拶などなかったかのように、全員普通に座っている。学活が始まるからか。
担任が教室にはいってくる。
「おおっ、すばらしい。みんなちゃんと座ってるな。これは内緒なんだけど、A組は、式典などで先頭を務めることが多いから、他のクラスより多く優秀なやつを集めるんだよ。ってことで、俺も優秀なんだよね。」
そういって黒板に名前を書き始める。
「草壁 篤弘だ。みんなよろしくな!」
微妙な空気を保ったままクラスの自己紹介に移る。当たり障りもなく終わる。帰る時間になり、全員がドアのほうへ向かうなか、私だけが逆行して勝村を捕まえる。
「すごかった!なんで?小学生の時と全然違うじゃん!面白かったしかっこ良かった!」
「…一生に一度しかないんでしょう?忘れられないものにしてやりたかった。」
「えっ、私のため?」
「…違う。まぁ、せっかく前に立つならと思って。」
嘘っぽい。顔そらした。
「なんにしてもすごかった!」
「……あんまりほめられるとどうしたらいいか…」
「素直にありがとうって言えば良いんだよ。」
勝村は、照れ臭そうに
「…ありがとう。」
と言った。
尊いな、クール系の照れてる様子。ズブズブに甘やかしたい。私の手によって。
色々妄想を巡らす。
気づいたら勝村はいなくなっていた。普通なんか言ってから帰るくない!? まあ、いつも何も言わずに会釈して帰るけど。会釈見逃した私が悪いか。
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