海の真ん中

音心みら👒

海の真ん中

 あの夢を見たのは、これで9回目だった。


「……今日はどこだ」


 背中に風船が取り付けられ、どこかの海の上で漂っている。

 そして……。


 ピィ゙ーッ!

 パンッ!

 ザボンッ!


 トリにつつかれた風船が割れ、海に落ちる。

 もう何も感じない。


 僕はここ最近の、どこかの海の上に風船で飛んでいる夢を見る。

 決まってトリが風船をつつき、海に落ちる。

 そして、目が覚める。

 9日間連続だ。

 一回目は地中海。白い建物がいっぱい見えた。

 綺麗だった。

 あのときはただ綺麗な海と街を見れたと喜んでいた。

 だが、こうも連続で同じような夢を見るものか。

 高所という恐怖も、どうでも良くなった。

 今日は目印がなくてどこの海なのかわからないが、すぐに目を覚ますのだからどうでもいい……。


 ……ん?

 おかしいぞ?

 いつもなら海に落ちてすぐに目が覚めるのに、今日は覚めない。

 足をばたつかせて浮かんでいる。


「わ! 何だ!?」


 いきなり太陽の光が強くなって目を開けていられなくなる。

 数秒が経ち、ゆっくりとまぶたをあげると、そこには王座にちょこんと座っているトリ……の神様、的なトリがいた。


「だ、誰スか……?」


 すると、ドヤ顔(?)で王座に佇んでいたトリがズッコケた。


「と、トリの降臨ばい?」

「……は?」

「トリの降臨」

「?」

「なして理解出来とらんとね!? ちょっとはたまがりんしゃい!」

「トリの降臨もそうっスけど、博多弁が気になって……」

筑後ちっご弁も入っとーばい」


 別にそこはどうでもいいんだけどな……。

 同じ福岡の言葉だし。


「そげんことよりも、気になることがあるやろ?」

「まぁ……」

うてみんしゃい」

「この状況……」


 周りを見ても、海。

 王座の周りだけ金色に輝いている。


「あぁ、ここは太平洋ばい」


 なるほど。何も目印がないと思ったらここは太平洋だったの――


「そうじゃなくて! なんでこんな夢を連続で見てるのかってことと、この状況だよ!」

「何だそげんことか。それなら心配はなか」

「はぁ……?」

「そりゃズバリ、君が――」


 その瞬間、僕の目はどんどんフェードアウトし始める。


「はっ!」


 周りを見渡すと、よく見慣れた自室だった。


「ん〜……?」


 結局なんだったんだ?

 一番気になるところで区切られてしまった……。

 まぁ、いいか。

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海の真ん中 音心みら👒 @negokoromira

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