4. 陳列棚

 ——食堂併設の購買部。


 棚に陳列されているものは、いかにも建築学科らしく、ホームセンターに置いてあるようなものばかり。


 いかつめの金槌ハンマー雷のハンマーマイティソーではない。護身用によさそう。

 巻き尺スケール。一般的なものとの違いは、備え付けの水平器。バイオラボのタンクに満たされていそうな緑色の液体に、水泡が浮いている。

 工具差し。

 腰袋。

 クリッパー。

 インパクトドライバー。

 ラチェットレンチ。

 セーフティワイヤー。

 そして、ギャルギャルした一年生の目当ての品、安全帯もある。


「あ、そうだ。実は、この購買部にまつわる、奇妙な話があるんだけど、知ってる?」


「奇妙な話? 何それ知らない! でも、面白そう!」


「じゃあ、〈購買部のおばちゃんすぐに辞めちゃう現象〉について教えてあげよう。その現象は……まぁ文字通り、なんだけど、この購買部で働くおばちゃんは、謎の体調で、すぐに辞めてしまうんだ。後任のおばちゃんが来ても、やはりすぐに辞めてしまう。そしてそれは、グレート工科大学建築学科キャンパス七不思議の一つ……」


「へぇ、不思議ですね。それに、ちょっと怖いかも。ていうか……七不思議ってことは、他にも六つ、あるってことですか?」


「ない。ごめん、七不思議っていうのは嘘。でも今言った現象は、本当だよ?」


「もぉ(先輩を小突く)、嘘はダメですよ、先パァイ! にしても購買部のおばちゃん、来ないですね。お昼休み中に帰ってきてくれるといいんだけど……ていうか先パァイ、ちょっと中、調べてみません? ひょっとしたらウチらで謎、解明できるかも!」


「そ……うだね! コレッテモシカシテ!? 今なら、人目も少ないし。ソウユウカンジ!? 入ってみようか!」


 そんなこんなで二人は、購買部のおばちゃんが席を外している隙に、購買部のレジカウンターの内側に侵入したのだった。

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