第30話
父への思慕……
寧々はまた早朝練習の後で河原に座っていた。
父さんか……
1ヶ月に一度会って一緒にご飯食べるだけの存在。あっちにはもう子供が2人もいるし。別に会わなくても構わない。
寧々は膝を抱え込んだ。
いっちゃんはいっちゃんだよね……
お父さんとは違う。
少し年の離れたお兄さんって感じ。
お父さんってどんな感じなんだろ。
それが分からなきゃ笑里は出来ないし……
分からない。
「ねえ、いっちゃん、一日私とデートして」
矢野は思わず飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。
「本当の事を言うと、演技で行き詰まってる
の。父親への思慕を演じなきゃいけないんだけど、その気持ちが分からないの。だから一日中いっちゃんと一緒にいたらそれが分かるんじゃないかと思って…… 」
「真理子、どう思う?」
「ちょっと妬けるんだけどな。仕方ないか。寧々の演技のためだ」
こうして寧々は矢野とデートする事になったのである。
矢野は今31歳。男盛りである。
そして改めて見てもカッコイイ。
寧々はチラチラと矢野を見ている。
「ねえ、いっちゃん」
「せめて今日ぐらいはパパと呼んでくれないかな」
「だってパパってイメージじゃないんだもん」
「それをイメージするのが役者ってものだ。俺の娘の役を演じてみろ」
寧々は戸惑いながらも役に入った。
「ねえパパ、私欲しいものがあるの」
寧々は甘えた声でおねだりをする。
「ダメだよ。それじゃ彼氏に言ってるようなものだ」
「難しいなあ…… どうすればいいんだろう?」
矢野が寧々の髪に優しく手を掛けた。
「寧々、お前最近その事ばかり考えているだろう。たまには気分転換しよう」
「でも演技してなきゃ、せっかくいっちゃんと2人きりになったのに時間がもったいないよ」
「今日はデートだよな。じゃあ恋人の役でもやるか。どうだ?寧々」
「受けて立とうじゃない」
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