ちょっと奇妙で、ヒヤリとする、時間や空間の体験を扱った短編集。なんとなく記憶にこびりついた奇怪な出来事、でも思い出そうとすればするほどその体験はゆがんでいく……果たしてあれは、本当にあったことなのだろうか。読む間だけ、何かがねじれた小さな世界を垣間見ることができる。現実離れしているのに、不思議なリアリティに満ちた筆致、短編ゆえのテンポのよい展開、愕然とさせてくれる結末。「こんな経験はないけれど、でもこの白昼夢みたいな奇妙さは知っている気がする」と感じたあなたももしかすると、記憶の一部が「なかったこと」にされているのかもしれない……。
こちらの作品は
オムニバス形式で綴られる
不思議な短編集です。
一作ごとに異なる舞台や
人物が登場しながらも
どこか現実と地続きでありながら
非現実に足を踏み入れてしまったような
「ずれ」を描いています。
軽妙な語り口で始まる日常が
気づけば背筋を冷やす
不穏な物語へと変わっていく展開は
ページをめくる手を止められません。
都市伝説めいた恐怖や
思春期特有の不安定さ
そして日常の裏側に潜む
奇妙さを掬い取ったストーリーの数々は
どこから読んでも
印象に残る余韻を残してくれます。
短編ながら密度のある世界観で
読後に
「これは夢だったのか、それとも現実か」
と問いかけたくなるような魅力があります。
どの短編も発想が鮮烈で、読み進めるうちに自然と物語の中へ引き込まれてしまいました。
「卵焼きの木」の怪しげなECサイト、カメラに映らない少女「池村さん」、そして延々と繰り返される「月曜日」――題材はまったく異なるのに、共通して“日常のすぐ隣に潜む不気味さ”を描き出しているのが印象的です。
静かな日常がふとした瞬間に歪み、恐怖や不安へと反転していく。その転換の鋭さと巧みさに、ページを閉じても余韻が残りました。短編でここまで多彩に仕掛けてくる作者様の引き出しの豊かさに驚かされます。
次はどんな「日陰」が描かれるのか、とても楽しみにしています。