第2話 お風呂

浴室で、愛ちゃんはたくさん話すけど、無理だって、愛ちゃんの裸姿を目の当たりにして、唯の平常心なんてものは遠く彼方にいってしまっているから。

「聞いてる?」と、愛ちゃんは唯をギュト睨み付けた。

「うん、聞いてるよ」と、慌てて返事はするけどさ。

ラベンダー色の湯船の中、唯と愛ちゃんと真正面に向かい合っているんだからさ。

今日のこの色なんか、エッチっぽいし、それだけでも照れてくるし、本当に困るから。

愛ちゃんの、湯船から出ている上半分の、おっぱいに視線がいったり、顔に視線がいったり、壁に視線がいったり、終いには天井に視線を走らせたりと、忙しなく唯の目は動いているんだからさ。


落ち着かない唯に、愛ちゃんが、きれた?までいかないけど、唯の両腕を愛ちゃんはガッチリ掴んで、「唯はいつも落ち着きが無いんだからっ、私の話が嫌なら言って、もう一緒に入らないし、話だってしないから」

そう言ったあと、愛ちゃんは、さっさっとラベンダーから上がって行った。


唯は泣きそうだった……怒られた?

腕、ちょっと痛い。目の前にいたのに、もう愛ちゃんいない。浴室のオレンジ色した明かりが、よけいに唯を悲しい気持ちにさせる。


唯は、揺れるラベンダーを手のひらで叩いた。湯が顔に跳ね、なんだか腹が立った。

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