第18話 はじまりの朝
そして四日が過ぎた。
オレが薬草を届け、村人に薬が処方されたその日の昼過ぎに聖女の魔法が発動し、国じゅうの罹患者の治療が行われた。
聖女の魔法があればオレたちの努力が無駄だったのでは……と考える者はいない。
少なくとも、魔法発動前に失う可能性があった命は救えたのだから。
ただ、この魔法は『体内の不浄を祓う』為、この世界の人間に不可欠な『魔素』は不浄と判断されなかったらしく、フィナの体内に過剰摂取された魔素はそのままだった。
結果としてフィナの魔素過剰症は改善されることはなく、昨日ようやく職場復帰はしたものの、長時間の高魔素領域への立ち入りは禁止された。
まあ受付嬢なので、立ち入り禁止されたところで、今までと変わらないと言えなくはないけどな。
そして聖女は眠ったまま。
まだ夜明け前。
オレと美夜は今、グリンウェルから少し離れた山の頂上にいた。
果てしなく広がる大地の先に、姿は見えない王都がある。
今、そこでは聖女から奪ったオーブを使って、儀式が行われている筈だ。
そして、それは成功するだろう。
隣に佇む美夜と二人。
ぼんやりと。ただしその瞬間を見逃さないように、遥かを眺める。
と、一筋の光が天から真っ直ぐに下りてきた瞬間、王都あたり……王城なのだろうが輝いて見えた。
「はじまりましたね」
普段の巫山戯た様子も無く、美夜が呟く。
「ああ」
とオレは返した。
「三年は長かったが、お陰で準備は整った。
後は、どう引っかき回すかだな」
そしてオレは立ち上がる。
王都に向かい、立ち塞がるように両手を広げ。
「さあ、『創世神記デミアース』。背神シナリオ『偽りの女神編』スタートだ」
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紺色のブレザーとスカートといった如何にもな高校の制服を纏った少女が目覚めると、そこは薄暗い石畳の部屋だった。
ボンヤリと光っていた石畳が元の冷たく暗い石になると、あたりから歓声が巻き起こる。
「やった! 成功だ!」
「これで魔族に勝てる!」
その言葉はわかったが、少女には……
成功? 魔族? 勝つ?
その意味が分からない。
何があったのかと重い体を持ち上げると、願掛けに伸ばしていた黒髪がさらりと落ちる。
隣では友人の
コツンと足音がして其方に顔を向けると、既に立ち上がっている
そして王様はにこりと笑うと、天輝にこう言った。
「ようこそ、勇者殿。我らが国をお救いください」と。
その言葉と共に、周りにいた人達が跪く。
その王様の笑顔は、皐月には途轍もなく気持ちが悪い物に見えた。
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作者の猫之です。
ご覧いただきまして、誠にありがとうございます!
有難いことに、少しずつですがPVも増えています。
本当に励みになります。
スマホでポチポチと書いております。
変換ミスなどありましたら、ご容赦いただけますと有難いです。
これにて序章が終わり、本編がはじまります。
ここまでは、今後の展開で説明が入らなくてもいいように、舞台の裏側や人間関係等の大まかな説明を兼ねたストーリーを書いてきました。
とは言え、かなり濁している部分もあります。
そこは、これからの展開で明かされる部分となりますので、しばしお待ちください。
下にあります「応援する」の♡にチェックをいただけますと有難く思います。
宜しくお願いいたします。
次は舞台を王都に移し、勇者達との絡みも出てきますよ!
今後も宜しくお願いいたします。
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