第18話 はじまりの朝

 そして四日が過ぎた。


 オレが薬草を届け、村人に薬が処方されたその日の昼過ぎに聖女の魔法が発動し、国じゅうの罹患者の治療が行われた。


 聖女の魔法があればオレたちの努力が無駄だったのでは……と考える者はいない。

 少なくとも、魔法発動前に失う可能性があった命は救えたのだから。


 ただ、この魔法は『体内の不浄を祓う』為、この世界の人間に不可欠な『魔素』は不浄と判断されなかったらしく、フィナの体内に過剰摂取された魔素はそのままだった。


 結果としてフィナの魔素過剰症は改善されることはなく、昨日ようやく職場復帰はしたものの、長時間の高魔素領域への立ち入りは禁止された。


 まあ受付嬢なので、立ち入り禁止されたところで、今までと変わらないと言えなくはないけどな。


 そして聖女は眠ったまま。


 まだ夜明け前。

 オレと美夜は今、グリンウェルから少し離れた山の頂上にいた。

 果てしなく広がる大地の先に、姿は見えない王都がある。


 今、そこでは聖女から奪ったオーブを使って、儀式が行われている筈だ。

 そして、それは成功するだろう。


 隣に佇む美夜と二人。

 ぼんやりと。ただしその瞬間を見逃さないように、遥かを眺める。


 と、一筋の光が天から真っ直ぐに下りてきた瞬間、王都あたり……王城なのだろうが輝いて見えた。


「はじまりましたね」


 普段の巫山戯た様子も無く、美夜が呟く。


「ああ」

とオレは返した。


「三年は長かったが、お陰で準備は整った。

 後は、どう引っかき回すかだな」


 そしてオレは立ち上がる。

 王都に向かい、立ち塞がるように両手を広げ。


「さあ、『創世神記デミアース』。背神シナリオ『偽りの女神編』スタートだ」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 紺色のブレザーとスカートといった如何にもな高校の制服を纏った少女が目覚めると、そこは薄暗い石畳の部屋だった。


 ボンヤリと光っていた石畳が元の冷たく暗い石になると、あたりから歓声が巻き起こる。


「やった! 成功だ!」


「これで魔族に勝てる!」


 その言葉はわかったが、少女には……七原ななはら皐月さつきには意味が分からなかった。

 成功? 魔族? 勝つ?


 その意味が分からない。

 何があったのかと重い体を持ち上げると、願掛けに伸ばしていた黒髪がさらりと落ちる。


 隣では友人の三倉みくら友美ともみがまだ寝ており、その先には目覚めたばかりであろう五輪いつわ悟史さとしが、頭を振っていた。


 コツンと足音がして其方に顔を向けると、既に立ち上がっている一条いちじょう天輝たかてるとその前に立つ王様。

 そして王様はにこりと笑うと、天輝にこう言った。


「ようこそ、勇者殿。我らが国をお救いください」と。


 その言葉と共に、周りにいた人達が跪く。

 その王様の笑顔は、皐月には途轍もなく気持ちが悪い物に見えた。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


作者の猫之です。


ご覧いただきまして、誠にありがとうございます!

有難いことに、少しずつですがPVも増えています。

本当に励みになります。


スマホでポチポチと書いております。

変換ミスなどありましたら、ご容赦いただけますと有難いです。


これにて序章が終わり、本編がはじまります。


ここまでは、今後の展開で説明が入らなくてもいいように、舞台の裏側や人間関係等の大まかな説明を兼ねたストーリーを書いてきました。


とは言え、かなり濁している部分もあります。

そこは、これからの展開で明かされる部分となりますので、しばしお待ちください。


下にあります「応援する」の♡にチェックをいただけますと有難く思います。

宜しくお願いいたします。


次は舞台を王都に移し、勇者達との絡みも出てきますよ!

今後も宜しくお願いいたします。

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