第29話 関ヶ原前夜:蠢動

 慶長2年(1597年)10月、佐竹氏の与力大名であり、義宣の従兄弟でもある宇都宮国綱が改易された。この報せは、佐竹家にも暗雲をもたらした。

「宇都宮様が…」

 義宣は、信じられない思いで呟いた。

「我々も、処分を受けるかもしれぬ…」

 家臣たちの間に、動揺が広がった。

 しかし、義宣は諦めなかった。従前から親交があった石田三成に助けを求めたのだ。三成は、義宣の窮状を理解し、秀吉に取り成しを行った。

 10月7日、義宣から父・義重に宛てた書状には、三成の取りなしによって、佐竹家が改易を免れたことが記されていた。

「三成様…」

 義宣は、感謝の念を禁じ得なかった。

 しかし、安堵も束の間、新たな危機が迫っていた。慶長4年(1599年)閏3月3日、前田利家が死去したことを契機として、加藤清正、福島正則、加藤嘉明、浅野幸長、黒田長政、細川忠興、池田輝政は三成の屋敷を襲撃したのだ。

「三成様が危ない!」

 義宣は、すぐさま行動を開始した。三成を女輿に乗せて脱出させ、宇喜多秀家の屋敷に逃れさせたのだ。

 この一連の動きについて、義宣の茶の湯の師匠でもあった古田重然(古田織部)は徳川家康に釈明するよう勧めた。

「三成様は、公命に背いたこともない。それを討とうとするとは、何事か!」

 義宣は、毅然とした態度で答えた。

「私は、かつて三成様に恩を受けた。恩人の危急を見て、命をかけて救ったまで。このことを家康様に謝罪すべきというなら、御辺よきにはかられよ」

 重然は、義宣の覚悟に打たれた。忠興に取りなしを依頼したのだ。

 家康は、忠興からこの話を聞き、「義宣が身命をかけて旧恩に報いたのは、義と言うべきである。異存はない」と答えた。

 義宣は、家康の言葉に安堵した。しかし、同時に、新たな戦いの予感を感じていた。

「暗雲は、まだ晴れぬ…」

 義宣は、呟いた。

 一方、現代のユウトは、新たな敵との戦いに備えていた。

「異次元技術の脅威は、まだ終わっていない…」

 ユウトは、呟いた。

 その時、ユウトたちの前に、異次元技術を操る新たな敵が現れた。

「貴様たち…!異次元技術は、我々が受け継いだ。貴様たちに、渡すわけにはいかない!」

 敵は、異次元技術を使い、ユウトたちに襲いかかってきた。

 ユウトたちは、それぞれの力を合わせ、新たな敵との激しい戦いを繰り広げた。

「俺たちは、必ず、この世界を守る!」

 ユウトは、叫んだ。

 二つの時代の戦いは、未来へと続いていく。

 

 慶長5年(1600年)初秋。

 天下は、静かなる嵐の前夜を迎えていた。

 豊臣秀吉の死後、その遺児秀頼を擁する豊臣家と、天下を窺う徳川家康との間に、抜き差しならぬ緊張感が漂っていた。

「家康様は、もはや我らを侮っておられる…」

 石田三成は、伏見城の一室で、苦渋に満ちた表情で呟いた。

「このままでは、豊臣家は滅びる。家康を討たねば…」

 三成の言葉に、集まった豊臣恩顧の武将たちは、固唾を飲んで聞き入った。

 その中には、佐竹義宣の姿もあった。

「三成様…」

 義宣は、静かに口を開いた。

「私は、三成様と命運を共にする覚悟でございます」

 義宣の言葉に、三成は深く頷いた。

「義宣殿…、感謝する。共に、この乱世を乗り越えようぞ」

 一方、大坂城では、徳川家康が着々と兵力を蓄えていた。

「三成の動きは、もはや明白。好機到来と見るべきであろう」

 家康は、冷徹な眼差しで、地図を見下ろした。

「諸将を糾合し、関ヶ原にて三成を討つ。天下は、我が手に」

 家康の言葉に、家臣たちは、畏敬の念を込めて頷いた。

 その頃、佐竹領内では、義宣が密かに兵士たちを訓練していた。

「我らは、三成様と共に、家康を討つ。そのためには、この者たちの力が必要だ…」

 義宣は、兵士たちの中に混じる、異形の者たちを見つめた。

 鋼鉄の肉体、無機質な瞳。アンドロイド。

 義宣は、異次元技術によって生み出された彼らを、密かに戦力として蓄えていたのだ。

「アンドロイド…、お前たちの力で、家康を討つ。そして、この国を…」

 義宣は、静かに呟いた。

 関ヶ原へと続く道は、既に開かれていた。

 それぞれの思惑が交錯し、時代のうねりが加速していく。

 天下分け目の戦いは、もはや避けられぬ運命となっていた。


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