ユウトは我に返った。穏やかな波の音だけが聞こえる、静かな午後だった。しかし、その静けさは、ユウトの心の奥底に潜む、拭い去れない不安を際立たせていた。

　リンとの戦いから数ヶ月。ユウトは、未だに彼女の死を受け入れられずにいた。愛と憎しみ、そして裏切り。複雑に絡み合った感情が、ユウトの心を蝕んでいた。

「リン…」

　ユウトは、海を見つめながら、小さく呟いた。

　その時、ユウトの釣り竿が大きく揺れた。

「来たか！」

　ユウトは、勢いよく釣り竿を引いた。しかし、その引きは、今まで経験したことのないほど強烈だった。

「何だ…！これは…！」

　ユウトは、必死に釣り竿を握りしめた。海面が大きく波打ち、何かが水中で激しく動いているのがわかった。

　やがて、海面から巨大な影が現れた。それは、巨大なナマズだった。

「ナマズ…！なぜ、こんなところに…！」

　ユウトは、驚愕した。

　ナマズは、ユウトの釣り糸を噛みちぎろうと、激しく暴れた。ユウトは、刀を抜き、ナマズに斬りかかった。

「貴様…！人々を苦しめるために、また現れたのか…！」

　ユウトは、ナマズに斬りかかった。しかし、ナマズの体は、あまりにも巨大で、ユウトの刀は、全く通用しなかった。

　ナマズは、ユウトを飲み込もうと、大きく口を開けた。ユウトは、間一髪でそれをかわし、ナマズの背中に飛び乗った。

「貴様の好きにはさせない！」

　ユウトは、ナマズの背中を駆け抜け、頭に向かって刀を振り上げた。

　しかし、その時、ナマズの体から、異様な光が放たれた。光は、ユウトの体を包み込み、意識を奪った。

　ユウトが意識を取り戻した時、彼は、見知らぬ場所にいた。そこは、薄暗く、湿った空間だった。

「ここは…一体…」

　ユウトは、周囲を見渡した。すると、目の前に、人影が現れた。

「よく来たな、ユウト」

　人影は、不気味な笑みを浮かべた。

「貴様…！一体、何者だ…！」

　ユウトが尋ねると、人影は答えた。

「私は、ナマズを操る者。そして、貴様の…」

　人影は、そこで言葉を区切り、笑みを深めた。

「貴様の、もう一人の…」

　人影の言葉が、ユウトの耳に響いた。

「もう一人の…？一体、どういうことだ…？」

　ユウトは、人影の言葉の意味を理解しようとした。

　その時、人影の姿が、ユウトの目に映った。

「まさか…！」

　ユウトは、驚愕した。

　人影の姿は、ユウトと瓜二つだった。

　ユウトが謎の人影と対峙している頃、戦国時代の佐竹家では、新たな混乱が起きていた。

「義宣様…！大変です…！蘆名義広様が…！」

　家臣が慌てて義宣の元へ駆け込んできた。

「義広様…？一体、何があったのだ？」

　義宣が尋ねると、家臣は答えた。

「蘆名義広様が、佐竹家を訪ねてこられたのですが、その様子が、どうもおかしいのです…！」

　義宣は、不審に思い、義広の元へ向かった。義広は、義宣の実弟であり、蘆名家を継いでいた。

「義広…！久しぶりだな…！」

　義宣が声をかけると、義広は、冷たい笑みを浮かべた。

「兄上…、ご無沙汰しております」

　義広の口調は、普段とは全く異なっていた。義宣は、義広の様子に違和感を覚えた。

「義広…、一体、どうしたのだ？様子がおかしいぞ？」

　義宣が尋ねると、義広は答えた。

「私は、蘆名家を捨て、兄上の元へ身を寄せに来たのです」

「蘆名家を捨てた…？一体、何があったのだ？」

　義宣が尋ねると、義広は答えた。

「蘆名家は、もはや滅亡寸前。私は、兄上の力を借り、蘆名家を再興したいのです」

　義広の言葉に、義宣は疑念を抱いた。蘆名家は、まだ勢力を保っており、滅亡の危機に瀕しているとは考えられなかった。

「義広…、貴様は、本当に義広なのか…？」

　義宣が問い詰めると、義広は、不敵な笑みを浮かべた。

「兄上…、何を言っているのですか？私は、義広に決まっているではありませんか」

　その時、義宣の脳裏に、現代のユウトの言葉が蘇った。

「偽物…！義広は、偽物だ…！」

　義宣は、確信した。

「貴様…！一体、何者だ…！」

　義宣が叫ぶと、義広の姿が、変化し始めた。義広の顔が、歪み、異形の姿へと変わっていく。

「私は、貴様の…」

　異形の姿は、そこで言葉を区切り、笑みを深めた。

「貴様の、もう一人の…」

　異形の姿の言葉が、義宣の耳に響いた。

「もう一人の…？一体、どういうことだ…？」

　義宣は、異形の姿の言葉の意味を理解しようとした。

　その時、異形の姿が、義宣の目に映った。

「まさか…！」

　義宣は、驚愕した。

　異形の姿は、義宣と瓜二つだった。

　二つの世界の影

　現代のユウトと、戦国時代の義宣。二人の前に現れた、もう一人の自分。それは、一体何を意味するのか。

　二つの世界で、新たな戦いが始まろうとしていた。