第10話 草津

 ユウトたちは、八千代と共に、水上都市を後にした。彼らの心には、新たな希望が灯っていた。人間と自然が共存できる世界。それは、決して容易な道ではないだろう。しかし、彼らは、その理想を信じ、歩み続けることを決意した。

「さて、次はどうするかね」

秀吉が、いつものように、扇子を広げながら言った。

「そうですね…。まずは、この霞ヶ浦の生態系を、元に戻すことから始めましょう」

 八千代が、静かに言った。

「そのためには、ガーパイクだけでなく、他の外来生物も、元の生息地に戻す必要があります」

「それは、大変な作業になりそうですね…」

 アスカが、少し不安そうに言った。

「ですが、私たちなら、きっとできます」

 ユウトが、力強く言った。

「それに、八千代様という、心強い仲間も増えました」

 ユウトが、八千代に微笑みかけると、八千代も、微笑み返した。

「はい。私も、皆さんと共に、頑張ります」

 その時、義宣が、何かを思い出したように言った。

「そういえば、以前、草津の温泉で、外来種の魚が大量発生しているという話を聞いたことがあるぞ」

「草津…?草津温泉のことですか?」

 ユウトが尋ねると、義宣は、頷いた。

「ああ。草津温泉は、高温の温泉が湧き出ることで有名だが、その温泉を利用した養殖場で、外来種の魚が飼育されていたらしい。しかし、何らかの原因で、その魚たちが、温泉に流れ出してしまったそうだ」

「それは、大変だ…!草津温泉の生態系も、危険に晒されているかもしれない…!」

 アスカが、心配そうに言った。

「草津温泉は、日本の代表的な観光地の一つです。もし、生態系が破壊されてしまえば、観光業にも、大きな影響が出るでしょう」

 秀吉が、深刻な表情で言った。

「私たちも、草津温泉へ向かい、生態系を調査し、対策を講じる必要があります」

 八千代が、真剣な眼差しで言った。

「わかりました。草津温泉へ向かいましょう」

 ユウトは、仲間たちを見渡し、力強く言った。

「しかし、草津温泉は、ここから、かなり距離があります。それに、草津温泉は、山奥にありますから、移動も困難でしょう」

 義宣が、冷静に言った。

「移動手段は、どうしましょうか…」

 アスカが、困ったように言った。

「ここは、わたくしに、お任せください」

 秀吉が、いつものように、扇子を広げながら言った。

「わたくしは、以前、草津温泉を訪れた際、地元の温泉旅館の主人と、親しくなりました。その旅館の主人は、馬を飼っており、その馬は、足腰が丈夫で、山道も難なく走ることができます」

「それは、助かります…!秀吉様、ありがとうございます!」

 ユウトが、感謝の言葉を述べると、秀吉は、微笑んだ。

「礼には及びません。これも、何かの縁でしょう」

こうして、ユウトたちは、草津温泉へ向かうことを決めた。彼らは、馬に乗り、山道を走り抜けた。途中、険しい道のりもあったが、彼らは、互いに励まし合い、困難を乗り越えた。

 そして、ついに、彼らは、草津温泉に到着した。草津温泉は、湯煙が立ち込め、硫黄の匂いが漂う、独特の雰囲気があった。

「ここが、草津温泉…」

 ユウトは、目の前に広がる光景に、息を呑んだ。

「さあ、まずは、旅館の主人に会いに行きましょう」

 秀吉が、そう言うと、ユウトたちは、旅館へと向かった。

 旅館の主人は、秀吉の旧友であり、ユウトたちを、温かく迎え入れてくれた。そして、彼らは、草津温泉で起きている異変について、詳しく話を聞いた。

「やはり、外来種の魚が、温泉に流れ出し、生態系を破壊しているようです」

 主人は、深刻な表情で言った。

「魚の種類は、特定できていますか?」

 八千代が尋ねると、主人は、首を横に振った。

「それが、まだ、特定できていないのです。魚の種類を特定するためには、専門家の協力が必要ですが、なかなか、見つからなくて…」

「それならば、私たちが、魚の種類を特定しましょう」

 八千代が、自信を持って言った。

「私は、長年、水生生物の研究をしてきました。魚の種類を特定するくらい、容易いことです」

八千代の言葉に、主人は、希望の光を見た。

「それは、助かります…!どうか、よろしくお願いします!」

 こうして、ユウトたちは、草津温泉の生態系調査を開始した。彼らは、温泉に潜り、魚の種類を特定しようとした。しかし、温泉の温度は、非常に高く、長時間の潜水は、困難だった。

「やはり、温泉の温度が高すぎて、調査が難しい…」

 アスカが、困ったように言った。

「何か、良い方法はないでしょうか…」

 ユウトが、考え込んでいると、八千代が、何かを思いついたように言った。

「そうだ…!温泉の温度を利用すれば、魚を捕獲できるかもしれません…!」

「温泉の温度を、利用する…?」

 ユウトが、不思議そうに尋ねると、八千代は、頷いた。

「温泉の温度を利用して、魚をおびき寄せるのです。そして、おびき寄せられた魚を、網で捕獲するのです」

 八千代の作戦は、見事に成功した。ユウトたちは、温泉の温度を利用して、魚をおびき寄せ、網で捕獲することに成功したのだ。

 捕獲された魚を、八千代が調べた結果、その魚は、ティラピアという、アフリカ原産の魚であることが判明した。

「ティラピア…!なぜ、こんなところに…!」

 ユウトは、驚きを隠せなかった。

「ティラピアは、高温にも強く、繁殖力も高い魚です。このまま放置すれば、草津温泉の生態系は、完全に破壊されてしまうでしょう」

 八千代が、深刻な表情で言った。

「ティラピアを、駆除しなければ…!」

 ユウトは、決意を新たにした。

 こうして、ユウトたちは、ティラピアの駆除作戦を開始した。彼らは、草津温泉の住民たちと協力し、ティラピアを捕獲し、駆除していった。

 ティラピアの数は、膨大だったが、ユウトたちは、諦めずに、駆除を続けた。そして、ついに、彼らは、草津温泉から、ティラピアを完全に駆除することに成功した。

「やった…!ついに、ティラピアを、全て駆除できた…!」

 ユウトは、喜びを爆発させた。

「皆さん、お疲れ様でした。あなたたちのおかげで、草津温泉の生態系は、守られました」

 旅館の主人が、感謝の言葉を述べた。

「いえ、私たちは、当然のことをしたまでです」

ユウトが、謙遜して言った。

「しかし、今回の件で、外来種の脅威を、改めて認識しました。私たちは、これからも、外来種の侵入を防ぎ、生態系を守るために、努力していかなければなりません」

 八千代が、力強く言った。

「はい。私たちは、これからも、共に、自然を守り、人間と自然が、共存できる世界を目指して、歩んでいきましょう」

 ユウトは、仲間たちを見渡し、力強く言った。

こうして、ユウトたちは、草津温泉での戦いを終え、新たな一歩を踏み出した。彼らは、これからも、様々な困難に立ち向かい、人間と自然が、共存できる世界を目指して、旅を続けるだろう。

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