第11話 津波

 草津温泉でのティラピア駆除を終えたユウトたちは、束の間の休息を取っていた。温泉街の賑わいを取り戻した人々からの感謝の言葉に、彼らの心もまた、温かく満たされていた。

「さて、次はどこへ向かうか」

 秀吉が扇子を広げ、いつものように問いかけた。

「まずは、霞ヶ浦に戻り、生態系の回復状況を確認しましょう」

 八千代が静かに答えた。

「しかし、その前に、少し気になることがある」

 義宣が、遠くの空を見つめながら言った。

「気になること、ですか?」

 ユウトが尋ねると、義宣は頷いた。

「鹿島灘の様子が、どうもおかしい。潮の満ち引きが、いつもと違うように感じる」

 その時、アスカが空を指さし、叫んだ。

「見て!空が、真っ赤に染まっている!」

 空は、不気味な赤色に染まり、まるで炎が燃え盛っているかのようだった。そして、遠くから、轟轟と地響きのような音が聞こえてきた。

「まさか…!」

 ユウトは、義宣の言葉を思い出し、鹿島灘の方角を見た。

「津波だ!鹿島灘に、津波が来るぞ!」

 ユウトの叫びと同時に、鹿島灘から、巨大な水の壁が迫り来るのが見えた。津波は、瞬く間に沿岸の街を飲み込み、破壊しながら、内陸へと進んでいく。

「急いで避難を!」

 ユウトは叫び、仲間たちと共に、高台へと駆け出した。しかし、津波の速度は、彼らの想像をはるかに超えていた。

「くっ…!間に合わない…!」

 ユウトが焦る中、八千代が前に出た。

「皆さん、私に力を貸してください!」

 八千代は、両手を広げ、海に向かって力を放ち始めた。すると、津波の勢いが、わずかに弱まった。

「今のうちに、高台へ!」

 八千代の言葉に、ユウトたちは、再び走り出した。そして、間一髪のところで、高台へと辿り着いた。

 高台から見下ろすと、津波は、沿岸の街を完全に破壊し、内陸へと侵入していた。街は、瓦礫の山と化し、人々の悲鳴が、風に乗って聞こえてくる。

「こんな…!こんなことが…!」

 アスカは、目の前の光景に、言葉を失った。

「しかし、まだ終わりではない」

 秀吉が、冷静に言った。

「津波は、いずれ引きます。問題は、その後だ」

 その時、地響きと共に、地面が揺れ始めた。

「地震だ!」

 義宣が叫んだ。

 地震は、津波によって地盤が緩んだ影響で、さらに激しさを増していく。そして、その揺れと共に、遠くから、砂埃を巻き上げながら、巨大な軍勢が迫り来るのが見えた。

「あれは…!」

 ユウトが目を凝らすと、軍勢の旗印が、はっきりと見えた。

「埼玉国…!なぜ、こんな時に…!」

 埼玉国は、関東地方に位置する、強大な軍事国家だった。彼らは、これまでも、度々、周辺諸国に侵攻しており、その武力は、恐れられていた。

「連中は、津波と地震に乗じて、この地を占領するつもりだ!」

 義宣が、怒りを露わにした。

「許さない…!こんな時に、人々を苦しめるなんて…!」

 ユウトは、刀を抜き、埼玉国の軍勢に向かって走り出した。

「ユウト!待ってください!」

 アスカが呼び止めるのも聞かず、ユウトは、軍勢の中へと飛び込んでいった。

「私たちも、ユウトを援護するぞ!」

 義宣が叫び、秀吉、アスカ、八千代も、後に続いた。

 ユウトたちは、埼玉国の軍勢と激しい戦いを繰り広げた。彼らは、それぞれの力を合わせ、敵を圧倒していく。しかし、埼玉国の軍勢は、数で勝っており、戦いは、なかなか終わらない。

その時、ユウトの背後から、強烈な殺気が迫ってきた。

「ユウト!後ろ!」

 アスカの叫びと同時に、ユウトは、背後からの攻撃を、辛うじてかわした。そして、攻撃してきた人物の姿を捉えた。

「貴様は…!埼玉国の将軍、斎藤道三!」

 斎藤道三は、埼玉国最強の武将であり、その武力は、ユウトたちをはるかに凌駕していた。

「貴様たちが、この地を荒らす邪魔者か」

 道三は、冷たい声で言った。

「邪魔をしているのは、貴様たちだ!」

 ユウトは、刀を構え、道三に立ち向かった。

 ユウトと道三の戦いは、激しさを極めた。二人の剣がぶつかり合うたびに、火花が散り、周囲の空気を震わせた。

 しかし、道三の力は、ユウトの想像をはるかに超えていた。ユウトは、徐々に追い詰められ、ついに、刀を弾き飛ばされてしまう。

「ここまでか…!」

 ユウトが覚悟を決めた時、八千代が、道三の前に立ちはだかった。

「貴様の相手は、私だ」

 八千代は、静かに言った。

 八千代は、道三に向かって、力を放ち始めた。すると、道三の動きが、わずかに鈍った。

「今のうちに、ユウト!」

 八千代の声に、ユウトは、再び立ち上がり、刀を拾い上げた。

 ユウト、義宣、アスカ、秀吉、八千代。彼らは、それぞれの力を合わせ、斎藤道三と埼玉国の軍勢に立ち向かった。そして、激しい戦いの末、ついに、彼らは、斎藤道三を打ち破り、埼玉国の軍勢を退けることに成功した。

「やった…!勝ったぞ…!」

 ユウトは、喜びを爆発させた。

「しかし、まだ終わりではない」

 秀吉が、冷静に言った。

「津波によって、多くの人々が家を失い、食料も不足している。私たちは、彼らを救済し、復興を支援しなければならない」

 ユウトたちは、力を合わせ、被災者の救済と復興支援に尽力した。そして、彼らの活躍によって、鹿島灘沿岸の街は、徐々に活気を取り戻していった。

 こうして、ユウトたちは、津波と埼玉国の侵攻という、二つの困難を乗り越え、人々を救った。彼らは、これからも、様々な困難に立ち向かい、人間と自然が、共存できる世界を目指して、旅を続けるだろう。

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