第5話 八千代

 イバラキング軍との激闘から数日後、ユウトたちは、アスカから驚くべき事実を聞かされた。

「ベヒモスを操っていたのは、私の宿敵、八千代…彼女は、未来の世界を滅ぼそうとした、最悪の犯罪者よ」

 アスカの言葉に、ユウトたちは息を呑んだ。

「八千代…?聞いたことがない名前だな…」

 ユウトが呟くと、アスカは、重い口を開いた。

「彼女は、未来の世界で、『始末屋』と呼ばれていたわ。どんな任務も完璧に遂行することから、そう呼ばれていたの。でも、彼女は、任務のためなら、手段を選ばなかった。多くの人々を犠牲にして、目的を達成しようとした。私は、彼女を止めるために、未来から来たの」

 アスカの言葉に、ユウトは、八千代の恐ろしさを改めて感じた。

「なぜ、八千代は、過去の世界に現れたんだ?彼女の目的は、一体何なんだ?」

 ユウトの問いに、アスカは、首を横に振った。

「分からないわ。でも、彼女が過去の世界で何かを企んでいることは確かよ。彼女を止めなければ、過去も未来も、滅んでしまう…」

 その時、秀吉が、静かに言った。

「八千代…か。面白い名前ですなぁ…」

 秀吉は、扇子で口元を隠し、何かを考えているようだった。

「秀吉様、何かご存知なのですか?」

 ユウトが尋ねると、秀吉は、答えた。

「いえ、何も。ただ、わたくしの過去に、同じ名前の女性がいたことを思い出しました。彼女は、非常に優秀な忍びで、わたくしの右腕として活躍していました。しかし、ある時、彼女は、姿を消してしまったのです…」

 秀吉の言葉に、ユウトは、驚いた。

「まさか、その女性が…」

 ユウトの言葉を遮るように、アスカが言った。

「秀吉様の時代の八千代と、私の時代の八千代が同一人物かどうかは分からないわ。でも、彼女が過去の世界で何かを企んでいることは確かよ。彼女を止めるためには、彼女の目的を突き止めなければならない」

 アスカは、そう言うと、シルフィードに乗り込み、飛び立とうとした。

「アスカ!」

 ユウトが呼び止めると、アスカは、振り返った。

「私は、八千代を追うわ。あなたたちは、イバラキング軍の残党の始末をお願い」

 アスカは、そう言うと、空へと飛び去っていった。

 ユウトと義宣は、顔を見合わせ、頷き合った。

「我々も、やるべきことをやろう」

 義宣は、刀を構え、ユウトに言った。

「ああ、必ず、八千代を止めるんだ」

 ユウトは、拳を握りしめ、答えた。

 その時、ユウトたちの前に、一人の男が現れた。

「お前たちが、噂の始末屋か?」

 男は、茨城弁で、ユウトたちに話しかけた。

「俺は、イバラキング軍の残党、鬼瓦だ。イバラキング様の仇を討つために、お前たちを始末しに来た」

 鬼瓦は、そう言うと、手に持った巨大なハンマーを振り上げた。

 ユウトと義宣は、それぞれの武器を構え、鬼瓦に立ち向かった。

 一方、アスカは、シルフィードを操縦し、八千代の行方を追っていた。そして、ついに、八千代の居場所を突き止めた。

「やはり、ここにいたのね…八千代…」

 アスカは、シルフィードを降下させ、八千代の前に降り立った。

 八千代は、アスカを見て、微笑みかけた。

「久しぶりね、アスカ…」

 八千代の言葉に、アスカは、怒りを露わにした。

「貴様の目的は、一体何なの?」

 アスカが尋ねると、八千代は、答えた。

「私の目的は、ただ一つ。この世界を、私が理想とする世界に変えることよ」

 八千代の言葉に、アスカは、愕然とした。

「貴様の理想…?貴様は、世界を滅ぼそうとしているんだ!」

 アスカが叫ぶと、八千代は、答えた。

「滅ぼすのではないわ。再構築するのよ。この腐りきった世界を、一度破壊し、私が理想とする美しい世界へと作り変えるの」

 八千代の言葉に、アスカは、絶望を感じた。

「貴様は、狂っている…!」

 アスカは、シルフィードの武器を構え、八千代に攻撃を仕掛けた。

 八千代とアスカの戦いが、再び始まった。

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