第28話 過ぎた話
「・・・お、お前・・・この圧──なんレベルだ・・・・?」
「─ようやく喋ってくれる気になりましたか。僕は14レベルですよ。そこそこ戦えます。」
「じゅ、じゅうよん・・・・ダメだそれじゃあ・・・」
再び泣きじゃくりそうになるおじさんを、アラタは叫んで奮い立たせる。
「今叶わなくとも方法はあります。スキルの存在、知ってますか?僕のスキルを使えば・・・なんとかなります!」
嘘ではない。
だからアラタは目を見ておじさんに必死で訴えかける。まだ絶望するなと。
その様子を見たおじさんはぽつりぽつりと今まで起こったことをこぼし始めた。
・
「──つまり、ダンジョンから出るにはダンジョン内にある中ボスとダンジョンボスの2体を殺さないといけないのですか──?」
どうやらおじさんによると、ダンジョンから出るために、ダンジョン内に存在する二つのボスを倒す必要があるらしい。
ダンジョン化現象が始まった後、町の人たちの中で町の外へと出ようとしたのはわずかであった。
町の住民がいよいよまずい状況だと理解したのは町全体が結界に覆われ、すでにダンジョン化が完璧に終わってしまった頃らしい。
街には大量のモンスターたちが現れ、次々と主に町の高齢者や子供たちが殺されていく。
そんな中、一部の人間たちは必死に戦い、レベルをあげ、町の一箇所に集まることができたようだ。
その時点ですでに町の多くの人間が消滅していたが、逆に生き残ったものたちのレベルはかなり上がっており、もうそこらじゅうのモンスターには負けず、モンスターたちも多少の圧を感じて近づいてこないほどだったようだ。
平均レベルは4。
「─そこにミナもいたと。」
「あぁ。彼女は最初からかなり強く、力を──魔法を、町の中で一番うまく使いこなせていた。
村の住民が一箇所に集まって協力体制に入れたのも、彼女ができる限り街を回って人々を助けてまわっていたからなんだ・・・」
ミナのレベルは町の住民が集合した頃には11レベルに達していたらしい。
集合地は道の駅内。
集合後、そこでとにかく「ゲーム化」についての情報を収集したようだった。
電波はかなり悪かったが一応ネットは使えたらしい。
その時点ですでにダンジョン攻略に成功した人間の情報が出回っているのを確認したようだ。
その人間が攻略したダンジョンは不目根田町のものとは違い、実家の物置小屋がダンジョン化したという随分と規模の小さいものであり、攻略も簡単なものらしい。
他にも同じように攻略の簡単なダンジョンの突破報告がいくつもネット上には上がっており、それらの情報からダンジョンは規模自体は違うものの、突破方法が同じであるということに町民たちは気がつく。
「その突破方法がダンジョン内にある二つのボスを倒すということですか。」
「あぁそうだ。
中ボスとされるボスがいて、そいつを倒すとダンジョンボスのいる場所へ行くことのできる『鍵』が手に入るんだ。
そしてダンジョンボスを倒すとダンジョン化が解除され、無事脱出できる。」
「・・・なるほど。」
──それで町の人たちはダンジョン攻略に・・・中ボスの討伐に挑んだわけですね?」
「・・・あぁ。そうだ・・・・」
おじさんは再び頭を抱える。
だが今度はそのまま口を閉ざさずに押し殺すようにして起こった事をアラタに伝えた。
中ボスに挑む前、塔から感じる異様な圧の正体がレベル差であるということもネットでわかっていた町民たちは1時間ほど付近のモンスター狩りを行なってレベル上げをしたらしい。
全員10レベルまで来るとなかなかレベルが上がらなくなったので狩りをやめ、攻略に切り替えたようだ。
かなりの人数がいたため、多少不利であっても通用すると考えたそう。
実際、その場にはすでに大勢殺されたといっても2000人を超える人がいたようだった。
もはや小さな軍隊レベルだ。
確かにこれだけいれば怖くないだろう。実際アラタもその場にいたらそう思っていたはずだし、町民たちの士気は高かったようだ。
塔の広さがわからないため最初は100人ほどが塔の中に入っていったようだが、帰ってくることはなかなかなかった。
町民たちが次の一手を迷っていると急にステータス画面のようなものが表示され、「ダンジョンリミット」という告知がされたという。
その告知とともに町の南端に巨大な圧を発するモンスターが現れ、町民たちの方へと向かってきた。
町民たちは、たまらずほとんどが塔の中へと入ることを決め、逆に出現したモンスターに攻撃をしてみるといった者たちはその場に残ったみたいだ。
アラタがここに来る際になんの人影もなかったことからどうやらその人物たちは殺されてしまったことがわかった。
塔に侵入した200人を超える人々はここまで来たらもう奥に潜むボスを倒すしかないと決めて一気に奥の──今アラタのすぐ目の前に広がっている広間へと駆け込んだようだ。
その中にミナもいた。おじさんは皆についていったが怖くなってこのアーチの手前で立ち止まったらしい。
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