小さな魔女と少年の約束
僕の初恋の人は小さな魔女見習いだった。
彼女は僕の幼馴染だ。
最初に目につくのはルビーのようなきれいな赤い目に金糸の綺麗な髪・・・。
その小さな体には少し大きい半角帽子に黒いローブ。
彼女のお母さんはとても有名な魔女で彼女もそんなお母さんを目指して日々魔法の修行をしていた。
新しく覚えた魔法を僕に見せてくれた。
泣き虫で僕の後をいつもついて来る彼女との日常は本当に幸せな日々だった。
そんな彼女は今日、旅に出る。
旅立ちの日、彼女は泣いていた。
僕と離れるのが寂しいのだろう。
だから、僕たちは約束した。
僕はいつか自分の店を持つ。
小さくてもいい、町の人に愛される小さなパン屋を開くと・・・。
その時にどうかそのパン屋を手伝ってくれないかと・・・。
彼女は笑った。
じゃあ、君の為にもいっぱい魔法を勉強してくるねと・・・。
僕たちは別れた・・・それぞれの道を歩くためにしばしの別れ・・・。
箒に跨り空を舞う。
まだまだぎこちない彼女。
行ってきます!
そう言って彼女は笑顔で手を振り飛んでいく。
どんどん小さくなる彼女の背に僕は手を振る
見えなくなるまで振る。
僕の頬には涙が流れていた。
あれから数十年の月日が流れた。
俺は小さいながらも自分の店を持つことが出来た。
大きな街のパン屋で修行をした。
自己研鑽に励みひたすらに修行に励んだ。
一流ホテルにスカウトされてしばらく働いていたこともあった。
十分な技術とお金が溜まったころに俺は生まれ故郷に戻ることを決めた。
多くの人にはもったいないと言われた。
引き留めてくれる人もいたが俺は彼女との約束を果たすためにこの町に戻って来た。
あの小さな魔女とは手紙で近況を報告し合った。
旅先での出会いや出来事など週一で報告して来てくれた。
彼女との文通は本当に心癒された。
辛い時は彼女の手紙を読み直して、明日への活力にした。
しかし、俺達は直接会うことはしなかった。
あの旅立ちの日にお互いに約束したから・・・。
共に夢を叶えるまでは会わないと・・・。
俺の店も多くはないが常連の客が付くようになった。
修業時代に通ってくれたお客さんや修行中の上司や同僚・後輩なども来てくれた。
今日も営業時間が終わりcloseの札を出す。
ドアのベルが鳴る。
すみません、今日は営業が終わっちゃいまして・・・。
久しぶりだね。
そう言って入って来たのは一人の女性だった。
まず、目に入ったのは綺麗なルビーのような目。
金糸の綺麗なブロンドのロングヘアー。
上質な黒のローブにあの頃は大きかった黒い三角帽子。
そう・・・小さな見習い魔女が一人前の魔女になって戻ってきたのだ。
俺達は再会を分かち合うために抱き合った。
俺は泣いた。
彼女も泣いた。
しばらく、お互いに泣いた後俺の部屋で思い出話に花を咲かせる。
その後、手紙では話しきれなかったこともいっぱい・・・。
夜も更けてそろそろ帰らないといけないという時、彼女は俺の裾を掴む。
帰りたくない・・・///
彼女は顔を真っ赤にしてそういう。
俺達もあの頃から成長した。
あの小さかった魔女は綺麗に成長した。
俺達は会えなかった日々を埋めるようにそっと唇を重ねる。
そして、その夜は想いを重ねたのだ。
翌日、俺達は互いに目をそらした。
彼女の顔は赤くなっていた。
俺も赤くなっていたと思う。
今日は店が定休日。
二人で町を散策した。
昔なじみに会い、思い出話に花を咲かす。
思い出の場所を巡り思いを馳せる。
思い出の場所は変わらないところもあったが数十年の月日が流れたことで変わったところもあった。
そこに少しばかり寂しい顔をする彼女の頭をそっと撫でてやると微笑んでくれた。
彼女の家に行くと俺達の様子におばさんがとても嬉しそうに、おじさんは怖い顔をしていた。
キッチンで二人向かった際におじさんと二人食卓に着いた時には生きた心地がしなかった。
キッチンから戻ってきた彼女もなんというか顔を赤くしていた。
おばさんは笑顔で孫の顔ももう少しで見られそうねといった瞬間のおじさんの目は今でも忘れられない。
その日も俺の家に泊まることになった彼女におばさんとどういう話をしたかと聞くと昨日の愛の交流のことを根掘り葉掘り引き出されたと聞いた時にはもう俺の方も恥ずかしくて顔を真っ赤にしたのだった。
今日は寝よう・・・そう思ってベッドに横になろうとしたときに彼女にそっと囁かれて。
私の修行に付き合って・・・。
その修行内容を聞かされて俺の頬は熱くなるのだが彼女は説明をしてくれた。
魔女の修行で愛する人と交流することがとても良いとのことだった。
・・・修行なら仕方がない。
俺は彼女をベッドに押し倒すとそのまま愛を交わし合った。
余談だがその修行は嘘で、魔女の恋のテクニックに一つだということだった。
町の小さな教会で俺達は式を挙げた。
俺の両親と妻の両親。
俺の昔お世話になった修行先や職場の人、妻の修行仲間や旅の最中に出会った人たち。
多くの人に祝福されて俺達は夫婦となった。
小さなパン屋で俺はパンを作り、妻は店番や宅配をする。
昔はぎこちなかった箒での飛行はもうスムーズで町の名物になっている。
その配達見たさに他の町からも宅配の依頼があったりしたぐらいだ。
そんな妻も今は仕事を休んでいる。
ある日、具合悪そうな妻を病院へ担ぎ込んだところお医者様は笑顔になった。
病気ではない。
それどころかとてもおめでたいことだった。
愛の交流を続けている内に俺との愛の結晶が彼女の中に宿っていたのだ。
俺達は互いに喜びを分かち合ったのだった。
そして、少しの時が流れて・・・。
初心声が響き渡り俺達の娘が生まれた。
俺は妻に労いの言葉をかけて妻は俺に愛の言葉をかける。
そして、俺達は娘に愛の言葉を・・・。
これからは家族三人歩んでいこうと誓うのだった。
娘が生まれて賑やかで慌ただしい日々が続く。
パン屋の手伝いに魔法の修行に励む姿はまるで昔の妻を見ているようだった。
さらに時が流れて・・・。
俺の娘が旅立ちの日を迎えた。
彼女は泣いていた。
寂しさのあまり大泣きだ。
そんな娘に一人の少年が近づくと自分の夢を誓った。
そして、娘もそんな少年のために修行を頑張ると誓った。
その姿はあの頃の俺達の様だった。
私達もあんな感じだったのかしら・・・。
そう言って妻はそっと俺の肩に頭を置く。
二人もしばらくそれぞれの夢のために違う道を歩むのだろう。
でも、それは長い人生の間のしばしの別れ・・・いつか、お互いの道は混ざり合いそして、共に歩むことになるだろう。
俺達の様に・・・。
娘が箒に跨る。
ぎこちなく飛ぶ彼女を励ますように少年は頑張れと・・・ボクも頑張るから!と声を掛ける。
娘も嬉しそうに私も頑張るから!
一人前になったら会いに行くから!と叫ぶ。
二人の目には涙が・・・。
少年は娘の姿が見えなくなるまで手を振り続けているのだった。
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