第12話。誰が大事
白い壁と、穏やかな光が差し込む病室。ベッドの上で静かに眠る七海。彼女の顔色は少し青白いものの、安らかな表情をしている。 ベッドサイドには、椅子に座り、七海の手にそっと触れているナナミシノハラ。彼の顔には、深い疲労の色が濃く残っているものの、七海の安らかな寝顔を見守る優しい表情が浮かんでいる。 彼の目は、まるで眠っている七海を守るかのように、彼女の顔から離れない。
その静寂を破るように、秘書女性が部屋に入ってきた。
秘書「先生、本日のお仕事ですが…」
ナナミシノハラは、秘書の声に反応し、ゆっくりと顔を上げた。目は、まだ少し赤く腫れている。
ナナミシノハラ「今日は…全部キャンセルにしてちょうだい。」
声は、かすれている。しかし、その言葉には、揺るぎない決意が込められていた。 仕事よりも、七海の健康が優先されるべきだと、強く思っている。
秘書「…分かりました。」
秘書は、静かに頷き、部屋を後にした。 ナナミシノハラは、再び七海の手に触れ、彼女の寝顔を見つめた。
七海は、かすかな意識の中で、秘書とナナミシノハラのやり取りを遠くに聞いていた。 そして、小さく呟いた。
七海「先生…大丈夫かな…」
彼女は、自分の状態を心配するよりも、ナナミシノハラのことを気遣っているようだった。 そして、かすかな笑みを浮かべた。
七海(ふふ…)
その笑みは、少し弱々しいながらも、希望に満ちたものだった。 彼女は、ナナミシノハラの優しさに包まれ、ゆっくりと、しかし確実に回復への道を歩み始めているのを感じていた。
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