【KAC】楽園か悪夢か

雨宮 徹

楽園か悪夢か

 あの夢を見たのは、これで9回目だった。9回目? いや、それ以上だろう。どんな夢か。恐竜が出てくる夢だ。どうして恐竜が出てくるかは分かりきっている。ジュラシック・パークの影響だ。私は年に1回は見ている。映画の影響で古生物学者を目指したが、残念ながらなることはできなかった。



 古生物学者になることはできなかったが、隣の県でアマチュアとして発掘することはある。もちろん、恐竜が出るような地層ではない。貝の化石がメインで、サメの歯が出れば上出来という地層だ。



 恐竜に熱中しているのだから、夢に恐竜が出てくるのは一種の楽園と言えるかもしれない。化石ではなく生きた恐竜だから、観察し放題、触れ合い放題だ。



 だが、悪夢の一面もある。夢なのだから、出てくる恐竜を選ぶことはできない。当然、肉食恐竜も現れる。当たり前だが追いかけられ、運が悪いと食べられる。ただ食べれるならマシかもしれないが、はらわたを抉られてから食べられるのは勘弁だ。起きてから「夢でよかった」と思うが、果たして夢で終わるのだろうか。



 冒頭でも触れたジュラシック・パークは「恐竜が生き返り、暴れる」という内容だ。科学が進歩すれば、いつかは恐竜を蘇らせることはできるかもしれない。その時、仲良く共存することはできるのか。おそらく難しいだろう。映画のようになること間違いなしだ。



 恐竜を蘇らせるのは危険だというのは、多数派だと思われる。ただ、それは暴れるからという考えだろう。それよりも重要なのは、絶滅した生物を現代に蘇らせるのは倫理的にどうかである。つまり、そのようなことをするのは人類の一種の自己顕示欲を満たすためという一面もある。「我々はここまで進歩した」と。



 科学の発展は良いことだが、悪用しようとする人間も出てくる。もし、良からぬことを考える人間が現れれば、映画のようになるかもしれない。その結果、人類は多大な犠牲を払うことになるだろう。もしかしたら、人類が滅び恐竜の時代が再びやってくるかもしれない。彼らが現代の環境に適応すれば、恐竜人間になるかもしれない。



 恐竜を蘇らせることが、どのような影響を及ぼすかは分からない。しかし、私はこう思う。深い眠りについた彼らを無理やり起こすのはどうなのかと。彼らに会うのは夢の中だけで十分だ。さすがに、食べられるのは勘弁だが。

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