第4話 事前準備

 「プロキシーの表記のあるスキルは進化する可能性のあるものなんです!」

「「「「「えーーー!」」」」」

全員が目を見開き、よしを見る。

 竜也たつやがよしと肩を組む。

「お前すげーじゃん!天才かよ!運よすぎ!いいなあー」

みんなでよしを称える。

『ちょっとそっち、うるさいぞ』

「え?あっ、ごめんなさい」

酒場の方にも聞こえていたようで、大きなゴブリンが怒鳴った。

「それでは、武器の配布をいたしますので、あちらの酒場の方でお待ちください。」

「「「「「はーい!」」」」」


「お待たせいたしました。こちら、初期装備、および武器でございます。」

エリナが抱えて持ってきた武器をそれぞれ受け取った。

 羽奏わかなは背中に背負うサイズの弓矢と、サイズを自由に変えられる矛を、けんは指のあいたグローブ、竜也は拳銃と火縄銃の間みたいな銃、まきは魔法少女ものに出てきそうな魔力を込めると大きくなる杖、そして、よしはGペンに似た魔筆と召喚の書を手に入れた。

「これらの初期武器は、仮の名前です。持ち主の性格やスキル、属性によって姿を変えます。普通、魔法を使って戦う賢者の羽奏さんが武器を持っているのは、それと、仮役職だからですね。」

なるほど、と5人は個々で理解した。

「武器の名前は先ほど伝えたとおり、仮の名前ですので、新しく名前を与えていただいてもかまいません。それによって変化する場合もあります。」

「分かりました。ありがとうございます。」

ここまで説明してくれたエリナに羽奏はおじぎした。

「最後に1つだけ、個人的に気になったことなんですけど、、、」

気まずそうにするエリナに賢は、どうぞ、と会釈した。

「みなさんは、このメンバーでパーティーを組むと思うのですが、役職や主要武器の種類的に、あまりバランスがよいといえないのです。特に、羽奏さんの適切役職は賢者(仮)ですから、役職がないと考えることもできるのです。」

 確かにそうだ、エリナが指摘したこと以外にも、属性を持たない竜也以外は、互いに弱点を突ける属性だった。さらに、遠距離型の役職が多く、近距離線ができるのは賢のみである。

そこで、まきが手を上げた。

「エリナさん、レベルのところを見落としていませんか?。」

「レベル、ですか?」

「はい。一見、役職や武器がよく目に入って、バランスが悪く見えます。でも、全員のレベルが5以上なんです。初心者の私が何か言うのも違うかもしれませんが、初期段階でレベル5以上はすごいことなんじゃないですか?」

エリナは5人のステータス表示を見返して、5人を見つめた。

「本当ですね。でも、初めての皆さんがどうしてレベルを持っているのでしょうか。本来は初心者の方々はレベル0から始まるのに、、、」

エリナが何か言い進める前に5人はそろって斜め上を見て、言いたいことをつまんだ。そんな中、羽奏が口を開き、補足をした。

「そ、それにみんなレベル関係なく戦闘力的なのはあると思うので、多分大丈夫だと思います。」

エリナは納得したのか、首を縦に振り、再度5人を見た。

「でしたら、これ以上説明することはございません。ありがとうございました。」

エリナの挨拶に軽く会釈をして、5人が外に出ようとしたとき、何か思い出したのか、エリナは5人を呼び止めた。

「すみません、大事なものを渡し忘れていました。ちょっと待っててください。」

エリナは裏の方に走り、カードのようなものを持って戻ってきた。

「こちら、皆さんのステータスを確認する、ステータスボードです。みなさん略してSTBなんて言ったりしてます。」

それぞれにSTBが配られる。

「こちらのマークに手をかざしていただくと、そのときのステータスが表示されます。最大レベルの100目指して、頑張ってください。他にも、お買い物の支払いや、連絡もこちらでできますので、よろしければお使いください。」

説明が終わり、エリナは受付へ戻っていった。

「エリナさん、ありがとうございました。また明日来ますね!」

「はい、またのご利用、お待ちしております。」

まきがエリナに声をかけ、それにあわせて他の4人が深くお辞儀した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る