第二章
第5話 新たな生活
気づいたら、まきは不思議なモヤの中にいた。目の前から鳥のさえずりに混ざって、女の子がこちらに近づいていた。立ち止まった女の子は静かに微笑み、すぐに姿を消した。
“まー”“まーきー”“
ぼやけた視界から少しずつ周りの景色が見えてくる。
「やっと起きたぁ。男子軍はもう行ったって、さっき連絡きた。」
STBを振りながら寝起きとは思えない声で
何が起こっているのか、こちらの世界に来てから約1週間。まきの中では物事が混在したままで、何も整理できていなかった。体を起こして、顔をつねり、今起きていることは現実であることを確認する。それを毎朝のように繰り返していた。
「おはよぉ、、、カナはよく普通でいられるね、、、」
不思議に思ったまきは、頭にある文字をそのまま言葉にした。
「別に不安じゃないわけやないよ、兄弟みーんなおいてきちゃったし。何なら不安すぎて、絶賛ホームシックって感じ、、、」
笑顔で語っていたはずなのに、一瞬顔が暗くなりそうになったのを、羽奏は頭を振って不安とともに降り飛ばそうとした。そんな羽奏の異変を、まきが見落とすことはなかった。
「うち以上にびっくりしてるのは男どもだよ、なんであいつらあんなに元気なん?」
羽奏は枕だけを元に戻して、ベッドに腰をストンッとおとし、まきの回答を待つように彼女の方を見た。
「どっからあんな元気出るのか。自分だって、能力の使い方とかイマイチ分かってないのにさぁ」
ごもっともと思いながら、服のしわを伸ばして、まきは身支度を済ました。
「おっけー、じゃぁ行こっか!」
羽奏が扉を開けて、2人は一緒に外に出た。
「おせぇよぉ」
2人が練習場につくなり、
「ごめんって」
面倒なのを避けるため、羽奏が軽く謝った。
すでに男子3人は練習をはじめていたが、竜也のスキル:
「それなら、自分の武器とかに使えばよかったじゃん。」
「あ、そっか」
まきに正論を言われて、いつものボケが出る。
残りの二人を見て、まきはいろいろと慣れすぎだと感じた。練習初日なのに吸収速度が半端じゃなかった。
「賢とよしまる、調子はどうですかぁ?」
羽奏がちょっかいをかけるように2人に話しかけた。そこにまきが駆け寄る。
「いやね、俺の特別魔法?みたいなのがあるんスけど、よく分かんないんっスよね。」
よしがふでを振る。まきと羽奏には波動が見えた気がした。やってみてと、まきが合図を送る。
「え、えぇっと、いくっスよ。 ?《トリック》」
よしがふでに手をかざすと、魔方陣が現れ、文字か表示された。
“竜也のギャグが南極級になりました。”
表示された文字を見るなり、竜也はすぐ賢の方を向いて、ニタッと笑った。
「虎の虎柄トランクがとられた!」
賢が下の方から凍っていく。が、その氷はすぐ溶けてしまった。
「え、何でなんで?何でお前氷溶けたんだよ!」
賢はしばらく考えてから口を開いた。
「いや、俺の属性炎だから氷技?は効かないんだよ。」
竜也がそんなのありかよ、と言いたげな顔で賢を見つめる。賢も当たり前のような顔で言っていたが、その目には驚きを隠せていなかった。
「よしまる、他にどんなのがあったの?」
羽奏がよしに聞く。
「えっと、賢さんの満腹度がマックスになって、裏ボス四天王の1人の核を壊して、おれのレベルが17になったっス。あと、竜也が小さくなって、それ追いかけてた感じっスね。」
便利なのかどうなのか、絶妙なラインを踏んでいる魔法だなとまきと羽奏は思った。
「、、、ちょっと待って、さっき四天王1人倒したみたいなこと言ってなかった?ステータス見せてよ、早く!」
よしのステータスには確かにレベル17と表示されていた。
「え、ここれマジなん?いいやつなんか、使いものにならんのか分からんわ。」
魔法の能力はほんとか否か謎なままだが、とりあえず5人はそれぞれ練習に入った。
「えっと、呪文は
ドンッ
まきが練習に入り始めた直後、ギルド内から大きな音が聴こえた。その騒音に交じって、誰かの怒鳴り声も聴こえる。
まきは慌てて駆け出し、それに続いてほかの4人もギルドの中へ向かった。
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