第4話
私を含めた4人の勇者パーティーがテーブルに着いた。パーティーメンバーは、面倒そうな表情で周りを見渡していた。最初のころは戸惑っていた酒場の騒がしさにも、初めて入る酒場にもすでに慣れていた。
「店員さん。ビールを2人分お願いします。あと、今日のおすすめは何ですか?」
この店の看板娘であろう若い女性店員は、一日に何度も聞かれているであろう質問に嫌な顔一つせず、ニッコリ優しく微笑んだ。
まだ10代に見える若い女性の店員に冒険者の酒場なんて、物騒でしかないだろうにどうして働いているのかと聞いたら、時給がほかと比べると、とんでもなく高いからと聞いたことがある。
スキルも学もなく、若いというだけで、採用される酒場は、都合がいいのだそうだ。
店員は、壁に掲げられたメニューを指さしながら答えた。
「おすすめは取れたてのオークのミートパイです」
「それじゃあ、それも人数分…あなたたちもそれでいいわよね?」
私はうきうきとしていた。店内の匂いはいまだに苦手だが、酒場の食事は、おいしいし、酒も飲める。旅をしていて、唯一の楽しみでもあった。
料理が運ばれてくるのを楽しみに、心躍る気持ちを抑えきれなかった。食事ごときにこんなにわくわくするのも子どもっぽいと我ながら思うが、この世界は本当に娯楽がない。テレビも漫画も小説もない。映画もない。何もない。だから、食事くらいしか楽しめるものがない。たまに吟遊詩人が歌を歌うくらいだった。だから、楽しみにして何が悪いというのか。
周りのパーティーメンバーたちは、私のそんな様子をいつも冷めた目で見ていることには気づいていた。
「いいじゃない。食べるのを楽しみにしても」
「あなたのそういうところが嫌いなの」
魔法使いのミアがそういった。
彼女は、私が聖女であることをずっと認めていなかった。
なにかあれば、見下したように「こんなのが聖女だなんて」と言っていた。
「だって、楽しみがこれくらいしかないんだもの」
「ねえ。ソレイユ。言ってよ。もう。私こんな人と一緒だなんて耐えられない」
「なにが?」
剣士のソレイユが、本当にめんどくさそうに一言告げた。
私は、この時のソレイユの顔を一生忘れないだろう。
「このパーティーを抜けてくれないか。」
「え?なんて?」
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