外道騎士ジェラルド・ヴェイダーの異世界蹂躙譚~全キャラ死亡エンドしかない鬱ゲーのざまぁ(惨殺)キャラに転生した。死にたくないので死ぬ気で努力したらヒロインたちとのラブコメゲーが始まった~
第1話 ざまぁ要員のヘイトキャラに転生したらしい
第1話 ざまぁ要員のヘイトキャラに転生したらしい
「――! ――――ルド!」
誰かの呼ぶ声がする。
水底から浮上するように、意識が徐々に覚醒していく。
目を開けると、見慣れない女の子が必死で何かを叫んでいた。
「ああジェラルド! 目が覚めたのだな!」
「おお、坊っちゃんが目覚められたぞ!」
「…………!?!?」
女の子は、俺が目覚めたことが嬉しかったらしくガバッと抱きついてきた。
暖かくて柔らかい、女性の身体の感触。
ふわりと香る、甘い匂い。
「……あ……俺は、なんで……」
「大丈夫だ、ジェラルド。身体の黒疽はほとんど消えている。もう大丈夫だ……! ああ、よかった……!」
泣きじゃくりながら俺を抱きしめる彼女には、まったく心当たりはなかった。
というかこの女の子、まだ14、5歳にしか見えないが妙に大柄だな?
というか、視界に映る景色の全部がデカかった。
俺の寝ているベッドはキングサイズだし、ベッドの横で心配そうに俺を見つめているナイスミドルなおじさまもかなりの大きさだ。
一応俺も成人男子としては平均程度のはずだ。
いや……ちょっとだけ足りない気もするが、それでも背が低すぎるということはない。
たしかに社畜でオタクで運動不足レベル99みたいな体型だったが……アニメの観すぎとゲームのやりすぎで身体が縮んだとか?
そんなバカな。
というかそもそもここ、一体どこだよ!?
いやいや、落ち着け俺。
ええと……少しずつだが思い出してきた。
たしか俺は昨晩、会社から帰宅したあとコンビニで買ってきた飯を食いスト○ロをグビ飲みしつつ同人ゲーを堪能していたはずだ。
異世界系の……結構ハードめなシーンのある、紳士がこっそり嗜むタイプのゲームだ。
しかも主人公もヒロインもバッドエンドシナリオしかないという、鬱ゲーと呼ばれるジャンルのゲームである。
ゲームのタイトルは『ブレイズオブグローリー』。
……なぜそんなゲームをプレイしていたかって?
そりゃたまたまだ。理由なんてない。
先週は別のゲームを遊んでいたし、その程度だ。
もっとも、このゲームはシナリオ自体は全ルートが死亡エンドながらシナリオによっては泣けるような感動エンドから胸糞エンドまで幅広く取り揃えており、しかもゲーム部分もよくできていた。
酒が入っているとはいえ、休日をまるまるゲームに費やす程度には。
ともかく、俺は仕事から帰ってきたあと次の朝まで夢中でプレイして、エンディングを含めたひととおりのシーンを回収して――
おかしい。
そこからの記憶がない。
いや、ラストのエンディングを観つつ、ス○ゼロの6本目を空けたところまでは覚えている。
さすがに徹夜明けのうえ大量に酒を飲み干したせいか、頭がガンガンでフラフラで……
もしかしてその後、酔っぱらったあげくフラフラ出歩いて、この子をナンパしたとか?
いやいやそんなわけあるかい!
こちとら同人ゲー好きのアラサーかつ彼女いない歴=年齢の筋金入りだぞ!?
いくら酒の力を借りたとしても、中高生くらいの女の子に声を掛けるほどアホじゃない。
というか、この人……よくよく見なくても美少女すぎだろ。
絹のように肩から流れ落ちる長い黒髪、心配そうに歪んでいるが切れ長の美しい目、少しばかり朱が差した白く滑らかな肌。
もちろん顔立ちは恐ろしく整っていて、少し開いた薄い唇は桜色。
超絶、といって良いくらいの美少女さんだ。
つーか……ちょっと待て。
「…………そんな、まさか」
カラカラに乾いた口を開き、どうにか擦れた声を絞り出した。
彼女の容姿を、名前を……知っている。
俺の知る見た目より、いささか年が若いようにも思えるが……それでも見間違えようもない。
……アリッサ・ヴェイダー。
嘘だ。
これは夢に決まってる。
そうじゃなければコスプレ美少女が出てくる夢だ。
そもそも『ブレイズオブグローリー』はそっちの界隈ではそれなりに人気とされているが、コスプレの対象になるほど知名度はない……と思う。
「うっ……」
ぐるぐる考えていたら頭痛が酷くなってきた。
というか、こんなに頭がガンガンと痛い夢なんてあるのだろうか。
それに倦怠感も酷い。
身体の節々も痛い。めちゃくちゃ痛い。
なんだこれ二日酔いレベル99か?
生きているのが辛いレベルのあの感じ。
身体もかなり熱を持っているようだ。
寒気がないのは救いだが、かぶさった毛布とベッドは汗でぐっしょり濡れていて気持ちが悪い。
震えて力の出ない手で、自分の頬をつねろうとする。
そこで違和感に気づいた。
おかしい。
髭のぞりぞりした感触がまったくない。
それに頬が妙にもちもちした感触だった。
「なんだこれ……?」
俺の口から、今度は擦れつつも甲高い声が出た。
まるで声変わり前の子供の声だった。
アルコールで喉でもやられたのか? そんなバカな。
「ジェラルド、大丈夫だ。まだ熱が下がりきっていないから、頭がぼうっとしているだけだ。じきに落ち着く」
言って、アリッサのそっくりさんが優しく俺の頭を撫でてくれる。
だからジェラルドって誰だよ。
「ベルナール、冷水に浸したタオルを用意してくれ。少し額を冷やしてやりたい」
「はっ。ただいま」
美少女……アリッサの指示で、隣の執事っぽいナイスミドルなおじさまが慌ただしく部屋を出て行った。
くそ、一体どうなっているんだ。
「ジェラルド、無理はするなと言っただろう……!」
「だ、大丈夫……です」
アリッサ(のそっくりさん?)が心配してるが、無理やり上体を起こす。
そこでようやく、どういう状況か察することができた。
ここは寝室のようだ。
薄暗く、部屋の奥で暖炉の薪が
少なくとも自宅のアパートじゃない。病院でもない。
……いやここどこよ?
ホテル? ホテルに見える。そういう装飾と間取りだ。
それも、高級ホテルのかなりいい部屋。
それかヨーロッパ風の古城コンセプトな部屋。
それなら暖炉もあるだろう。
なんかいい感じのタペストリーも、壁に掲げられた多分レプリカと思われる剣も。
いやいやいやいやなんで目が覚めたらホテルで寝てるんだよ!?
ていうかさっきのイケオジはホテルの支配人か? それっぽい気がするが、そもそも日本人じゃなかったぞ。
それを言えば目の前のアリッサのコスプレ美少女も、いくらなんでも完成度高すぎないか。
高すぎるというかそのものだ。
「うぐ……うぐぐ……」
泥を詰め込んだように重い頭を必死に回転させる。
そこで、
ベッドから少し離れた場所に窓がある。
外は真っ暗だから、時刻は夜なのだろう。
問題はそこに映っているものだ。
「…………は?」
思わず声が出た。
暖炉で燃え盛る炎に照らされて、窓には子供の顔が映っていた。
俺が頬を思い切りつねっているのと同じ動作をした、驚愕に歪んだ顔だった。
年はおそらく小学生高学年か、中学生に入学するかしないかといったところだろう。
軽くウェーブのかかった黒髪、幼いながらに整った顔立ち。
そして、自分の顔を見たとたんにすべてを思い出した。
俺の名はジェラルド・ヴェイダー。
今年で満12歳になる。
ゲームの舞台となるシルヴェラード王国の、国境を守護するホレイス辺境伯に仕える上級騎士アノール・ヴェイダーの息子にして、ベッドサイドで心配そうな顔をしている
領内で流行っていた疫病に蝕まれ、あやうく命を落としかけたが……どうやら奇跡的に助かった。
そして……とても重要な事実を思い出した。
ここが、さっきまで遊んでいたバッドエンドしかない同人鬱ゲー、『ブレイズオブグローリー』の世界だということを。
そして俺であるジェラルド・ヴェイダーは――
死ぬほどひねくれた性格とゲスなムーブで『外道騎士』と
物語のあちこちで主人公にウザ絡みしたうえヒロインである
覚醒した主人公にボコられ動けないところを魔物に生きたまま食われて死ぬ運命の……
まあ要するに、『ざまぁ』対象のクソッタレなヘイトキャラだ。
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