12月22日

「……準備は出来たか」


(……)


 何も言う必要はない。出来ていても、そうでなくとも。

 必ず終焉は訪れるのだ。



 俺は、ほぼ1年前に余命宣告を受けていた。

 抜け落ちた髪は代償となる資格もなく、徐々に体は健康だったその時とかけ離れていった。死に際が近づくにつれて、知り合いや親族はだんだん顔を見せなくなっていった。まあ、先月に目も見えなくなってしまったため、会いに来ても顔を合わせることはできないのだが。


「お前は、何も言わないのか」


(……何を)


 念じた思いなのに、なぜか掠れて出たような気がした。


「私を見て」


(……見えないのだから何も言うまい)


「……そうか」


 推測をするに、この声の主は中年男性だろう。口ぶりから何かしらコンプレックスを抱えているようだが、俺と比べたら少しは心が落ち着くだろう。


「……では、その時を待て」


 その言葉と共に、俺は足元の感覚を失う。

 そして膝、太腿、腰と、感覚を失っていく。


 ようやく、お迎えか。

 俺は開いていない目を閉じた。

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2026年1月1日 06:00

星を繋げて 時津彼方 @g2-kurupan

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