親も同然、子も同然④「失われた九回目」
ハマハマ
枕元に立つ末吉
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
だと? ぶつくさぶつくさ何言ってやがる
お化けだからってわたしの枕元に立つんじゃねえ。
妖精見付けに井戸行くんなら深夜が良い、そうブランどんが言いやがるから仮眠取ってるんじゃねぇか。
なのにぶつくさぶつくさとよ、このわたしの枕元でお化けらしく振る舞ってどうしようってんだ馬鹿野郎が。
なんだ? 九回目になるはずだった? なんでえ続きがあんのかよそのぶつくさぶつくさによ。
はぁ、もうしょうがねぇ。聞いてやるから喋んな。どうせこの
しかしグガグガガーガーうるさいね
そんでなんだ、その夢とかいうのを八回は見たってのか?
年一回? 平助が産まれてから毎年よく似た夢を見た?
お栄ちゃんとお前さんと平助と。六年前からはお千代坊が増えて、家族総出で花見に行く夢、ってか。
それが去年で九回目、今時分に十回目を見てたはずだってえのか……。
お前さんは井戸に落っこちて死んじまった。お化けは寝ねえから夢も見れねえし、夢の通りに花見に行く事も叶わねえ、か。
なんつうかよ、ぶっちゃけわたしにはさ、お前さんに掛けてやれる言葉のひとつも思い浮かばねえよ。
よし、ここでじめじめやっててもしょうがねえ。そろそろブランどん叩き起こして井戸行ってみようや。
ほらブランどん、出てすぐ右だ。長屋三つ四つ先に井戸見えるだろ。うるせぇな良いんだよ戸締りなんざどうだって。こんな時分に誰も出歩きゃしねえよ。
なんだって? 誰かいるだと?
おぅ確かに居るな。しかもお栄ちゃんちのとこじゃねえか。
やい徳三! てめぇ何してやがる!
ってなんだってんだあの野郎。
わたしの声に驚いて逃げちまいやがった。
お栄ちゃん、そこ居るかい?
わたしが来たからもう安心しな、いやいや良い良い、戸はこのまま開けなくって良いよ。
平助やお千代坊が起きちゃいけねぇ、お栄ちゃんも奥いって
おう、おやすみ、また明日な。
よしお栄ちゃんも奥に入ったな。
末吉にブランどん、
いつからこの井戸に妖精が住み着いてんだか知らねえがよ、どうにも曖昧な末吉の死の真相、そいつを探るの
親も同然、子も同然④「失われた九回目」 ハマハマ @hamahamanji
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