悪夢のカレイドスコープ
snowdrop
物語のはじまりを変える9つの技法
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
一読したあと、私はメガネを外し、眉間をつまみ上げる。フーッと鼻から長い息を吐き出した。
ひどい文章とは呼ばないが、お粗末な気がしてならない。
まっ先に気になったのが、「あの」「これ」と、指示語が使われている点だ。前後の文脈がないため、内容が不明確。具体的な説明に置き換えるか、文脈を追加する必要がある。
つぎに数字の表記。「9」が半角の数字で表記されてる。
漢数字かアラビア数字のどちらかに統一すべきだが、文学的な文章なら「九」、それ以外なら「9」に修正しなくてはならない。書式は作者によって縦にするか横で書くのか決められるとはいえ、気になって仕方がない。横書きだから、半角のアラビア数字を使っただけかもしれない。
「だった。」という過去形で終わっているところにも目がいく。文脈によっては、より強調的な表現や現在の状況を示す表現が適切かもしれない。目的に応じて「となった」「に達した」などに直すか検討する必要があるだろう。
指示語を避けた直しをすると、
「くり返し見る悪夢の出現回数が、九回目に達した」
文脈を追加した直しなら、
「幼いころから見続けている悪夢。今回で九回目となった」
現在の状況を強調した直しにするなら、
「あの忌まわしい夢の出現が、ついに九回目を数えるに至った」
現在形に変更し、より臨場感のある表現にすると、
「悪夢の再来。今夜で九回目を数える」
文体を整え、より文学的にするなら、
「夜毎に襲う悪夢は、今宵で九度目の訪れとなる」
悪夢の内容を具体的に示すなら、
「暗闇の中で追われる悪夢。目覚めた瞬間、九回目の恐怖が胸に刻まれる」
比喩を用いて印象的にするなら、
「悪夢は執拗な訪問者のように、九度目の来訪を告げる」
原文を活かして視覚的描写を加えると、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。薄暗い部屋の中、冷や汗で濡れた額を押さえながら、私は震える手で目覚まし時計を見つめた」
感情的な描写を強調してみると、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。胸に広がる不安と恐怖が、黒い霧のように私を包み込む。もう逃れられないのではないかという絶望感が、少しずつ心を蝕んでいく」
聴覚的な要素を追加してみると、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。耳の奥で鳴り続ける不気味な反響音が、夢の残滓を現実世界にまで引きずり込んでいるようだった」
時間の経過を表現してみると、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。最初の夢から三か月。頻度を増す悪夢に、私の精神は日に日に蝕まれていく」
時間の経過をさらに強調してみると、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。最初の夢から三週間。毎晩、決まって午前三時三十三分に目が覚める。時計の赤い数字が、まるで私を嘲笑うかのように瞬いている」
比喩を用いてみるなら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。まるで執拗な追跡者のように、その夢は私の睡眠を容赦なく侵食し続ける」
身体感覚を強調してみれば、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。目覚めた瞬間、全身の筋肉が強張り、喉は乾ききっていた。舌の上に広がる苦い味が、夢の余韻を思い出させる」
環境描写を加えてみるなら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。窓の外では雨が静かに降り続け、灰色の空が重苦しく垂れ込めている。部屋の隅に置いた古びた目覚まし時計が、無情にも時を刻み続けていた」
過去との比較をしてみるなら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。最初の頃は断片的だったイメージが、今では鮮明な映像となって脳裏に焼き付いている。夢の中の恐怖が、現実世界にまで染み出してくるようだ」
内面の葛藤を表現してみるなら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。理性では『ただの夢だ』とわかっていても、感情が追いつかない。現実と夢の境界線が曖昧になっていく感覚に、戸惑いを隠せない」
比喩を重ねてみるなら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。まるで深い井戸の底に沈められたかのような重圧感。夢の中の影が、現実の光を少しずつ飲み込んでいくようだ」
五感を使った描写にするならば、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。目覚めた瞬間、鼻腔をかすかな血の臭いが満たし、舌の上には金属の味が広がっていた。耳には誰かの悲鳴が残響し、肌には冷や汗が滝のように流れ落ちていく」
現実と夢の境界線を曖昧にするならば、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。目覚めても、夢の中の景色が部屋に重なって見える。壁に映る影が、夢の中の怪物の形に見えてしまう。もはや、どちらが現実なのか判断がつかない」
心理的な影響を描写してみるならば、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。くり返される悪夢に、私の精神は少しずつ蝕まれていく。日中も不安に怯え、夜が来るのを恐れる自分がいる。睡眠薬を飲んでも、あの夢から逃れられない」
比喩を用いた内面描写をするならば、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。まるで深い泥沼にはまったかのように、抜け出せない感覚に苛まれる。夢の中の恐怖が現実世界に根を張り、私の心を締め付けていく」
夢の内容を具体的に描写するなら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。暗闇の中、どこからともなく聞こえてくる足音。ふり返るたびに近づいてくる気配。逃げようとするが足が重く、まるで地面に縫い付けられているかのようだ。必ず最後に、冷たい手が肩に触れる瞬間に目が覚める」
夢から目覚めた後の孤独感なら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。目覚めた部屋は静まり返り、時計の秒針だけが規則的に時を刻んでいく。妙に音が大きく響き、私の胸にぽっかりと開いた孤独の穴を埋め尽くすかのようだった」
日常への影響を描写してみると、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。日中も影響は消えない。通勤電車の中でふと窓ガラスに映った自分を見ると、いつもより顔色が悪い。仕事中も集中力が続かず、同僚から『最近疲れてる?』と心配される始末だ。」
夢への恐怖を象徴的に表現してみると、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。まるで夜になるたび扉を叩いてくる訪問者のようだ。私はその扉を開けたくないが、眠りにつけば必ずその音が聞こえる。気づけば、夢の世界へ引きずり込まれている」
過去の出来事との関連性を絡めてみると、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。思い返せば、こんな夢を見るようになったのはあの日からだ。あの日、あの場所で起こったことが原因なのは間違いない。それなのに、何が起きたのか、記憶が曖昧で思い出せない。でもたしかに、夢が出来事と繋がっていることだけは確かなんだ」
身体的な異変を描写してみると、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。目覚めるたびに体には奇妙な痕跡が残っている。腕には赤い爪痕のような線が一本走り、足元には泥のような汚れがついている。現実なのか、それともまだ夢を見ているのかわからない」
くり返しへの絶望感を描くなら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。同じ恐怖が何度もくり返されることに耐えられない。次こそ違う展開になると期待しても、無惨に裏切られる。私はまた同じ結末へと導かれるのだ」
未来への不安を描くなら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。このままでは十回、十一回と、続いていくだろう。確信がある。それがどんなに恐ろしいことなのか、自分自身でも説明できない。一度はじまったこの連鎖から逃れる術はないように思えてならない」
記憶と夢との混濁を描くなら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。最近では、本当にただの夢なのか疑わしくなってきている。断片的な記憶と夢の内容が重なり合い、現実だった可能性すら否定できなくなってきている」
他者との関係性への影響を描くなら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。その話を親しい友人に打ち明けても、『疲れてるんじゃないの』と軽く流されてしまう。それ以上話す気力もなくなり、自分だけがこの恐怖と向き合わなければならない孤独感だけが残った」
悪夢の反復性と恐怖をより描くなら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。毎晩同じ場面がくり返される。暗闇の中で逃げ惑う自分、背後から迫る気配。目が覚めるたびに胸を締め付けるような恐怖が残る。まるで夢そのものが私を飲み込もうとしているかのようだ」
夢と現実の境界線が曖昧になる感覚を描くなら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。目覚めた後も、不気味な風景が頭から離れない。夢で見た廊下と現実の廊下が重なり合い、どちらが本物なのかわからなくなる瞬間がある。そんな感覚に囚われるたび、自分自身が壊れていくような気がする」
悪夢による身体的疲労感を描くなら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。目覚めた瞬間、全身にずっしりと沈むほどの重さを感じた。汗で湿ったシーツが肌に張り付き、息苦しさだけが現実だと教えてくれる」
夢に潜む象徴的な意味を描くなら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。私を追い詰める影は、一体何なのだろうか。顔も形もわからないあいつは、私自身の不安や後悔が具現化したものなのかもしれない。そう考えると、この夢から逃れる術はないように思えた」
悪夢による日常生活への影響を描くなら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。そのせいで昨夜もほとんど眠れず、朝起きても頭はぼんやりとしている。職場では集中力を欠き、小さなミスをくり返す。同僚から心配されても、『ただ疲れているだけ』と答えるしかなかった」
悪夢の視覚や聴覚の鮮明さを描くなら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。夢の中では赤黒い空が広がり、不気味な風音が耳元で囁いていた。遠くから聞こえる足音は次第に近づき、音だけが鮮明に記憶に残っている。まるで現実世界でも続いているかのようだ」
悪夢を見ることへの恐怖感を描くなら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。今夜もまた、悪夢を見るだろうという確信がある。考えるだけで布団に入ることすら躊躇してしまう。眠りにつくこと自体が恐怖になってしまった今、自分には安らぎなど存在しない」
悪夢と過去のトラウマとの関連性があるなら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。内容は、過去に経験したあの日と酷似している。忘れたいと思っていた記憶が、形を変えて何度も私を襲う。まるで過去そのものが私に罰を与えているような錯覚に陥る」
悪夢による孤独感なら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。誰かに伝えたいと思う反面、『ただの夢』として片付けられることへの恐怖もある。一人きりでこの恐怖と向き合わなければならない孤独感だけが胸に広がっていく」
悪循環としての日常との関係なら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。悪循環から抜け出せない自分に苛立ちすら感じている。眠れない夜、不調な日中、その繰り返しによって自分自身が壊れていく音が聞こえる気すらしていた」
追いかけられる夢として描くなら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。暗闇の中で誰かが私を追ってくる。足音が近づくたびに心臓が速くなり、息が切れる。逃げようとするが足が動かず、必ずその影に追いつかれる瞬間に目が覚める」
迷う夢なら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。道に迷い、どの方向に進めばいいかわからない。周囲は全て同じ景色で、自分が何度も同じ場所を巡回しているような錯覚に陥る。目が覚めるまで、その不確実さが続く」
トラウマを再体験する夢なら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。過去のトラウマが夢の中で再現される。まるで現実と夢の境界線が曖昧になり、目が覚めてもその恐怖が残る。自分自身が何度も同じ苦しみを繰り返しているようだ」
象徴的な動物が現れる夢なら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。夢の中で黒い犬が現れる。犬は私を追いかけ、逃げようとするが、いつも追いつかれる。犬は私の不安や恐怖を象徴しているのかもしれない」
自然現象が現れる夢なら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。風が吹き、雲が空を覆い、雨が激しく降り注ぐ。まるで現実世界の変化や不安が夢に反映されているようだ。目が覚めるまで嵐が続く」
超自然的な要素を含む悪夢なら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。暗い部屋で幽霊が現れる。まるで私を呼ぶかのように手を伸ばしてくる。現実では見たことがない姿だが、夢の中では何度も出会っている。目が覚めるたびに、存在感だけが残る」
科学的な要素を含む悪夢なら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。研究室で実験が失敗し、異常な生物が誕生する。自分が作り出したものが制御不能になり、逃げだせずその生物に追われる。目が覚めるまで、恐怖が続くのだ」
社会的な要素を含む悪夢なら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。街中で自分が社会から排除される。誰も私に話をしようとせず、まるで透明人間のように扱われる。現実でも同じように孤独感を感じている自分に、夢がさらに追い打ちをかけてくる」
自然災害を含む悪夢なら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。地震が起こり、家が崩壊する。逃げようとするのに足が動かず押しつぶされる瞬間、必ず目が覚める。現実でも地震の心配が常に頭をよぎる」
自己認識に関する悪夢なら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。過去の自分と対面する。自分自身が別の人格に変化し、まるで別の存在として振る舞う。目が覚めるたびに、異なる自分との対話が頭をよぎる」
幸福感や希望を与える良い夢の描写なら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。柔らかな光に包まれた草原が広がり、風に揺れる花々の香りが鼻をくすぐる。遠くには青々とした森が見え、空には綿菓子のような雲が浮かび、陽光が世界を黄金色に染め上げていた」
救いのある夢の描写なら、
「あの夢を見たのは、これで九回目だった。暗い迷路をさまよっていたが、遠くに光が見えた。光に向かって歩くと、親友が現れ、手を取った。迷路が消え、美しい草原に立っていた。目覚めた後も、希望に満ちた温かい気持ちが続いた」
といった具合に、いろいろな物語のはじまりとなるだろう。
なにか面白い話を考えようと、もう一度、一文を見る。
推敲に尽力を傾けているせいか、「指示語と半角のアラビア数字はない」と、アイデアより先にため息をこぼして手がつけられなかった。
悪夢のカレイドスコープ snowdrop @kasumin
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