8回見た夢。
かなたろー
ホワイトデーのプレゼント
あの夢を見たのは、これで9回目だった。毎晩のように、私は暗い部屋の中で目を覚ます。
手足が動かない。見下ろすと、私の体は冷たい金属の台に縛り付けられていて、目の前には男が立っている。顔は見えないけれど、彼の手にはナイフが握られていた。男は、笑いながらゆっくりと近づいてくる。
「ホワイトデーのプレゼント、受け取ってくれるね?」
彼が言うと同時に、ナイフが私の腕に食い込み、鮮血があふれだす。
彼は楽しそうに私の体を切り刻み、血が床に滴り落ちる音だけが静かに響く。夢の中で意識が遠のく瞬間、いつも目が覚める。
今朝もまた、冷や汗にまみれて飛び起きた。心臓がバクバクして、腕を触るとまだ痛みが残っているような錯覚に襲われる。でも、ただの夢だよね? 自分に言い聞かせて、高校に向かった。
その日の放課後、いつもの近道である裏路地を通っていると、妙な気配を感じた。振り返ると、男が立っていた。背が高く、フードで顔が隠れている。
あの夢と同じフードを着た男だ。私は凍りついた。
「近寄らないで!! 私を殺すつもりでしょう??」
「おや? 随分と察しがいいな」
そう言うと、男はパーカーの下からナイフを取り出す。
私は逃げた。全力で走った。でも、彼の足音はすぐ後ろに迫ってくる。つまずいて転んだ瞬間、彼が私に覆いかぶさってきた。
「ホワイトデーのプレゼント、受け取ってくれるね?」
ナイフが振り下ろされ、夢と同じ痛みが現実になった。彼は私を切り刻み始めた。腕を、脚を、まるで夢の再現のようにとても丁寧に、とても嬉しそうに。
私は血まみれの中で最後の力を振り絞って彼を見た。
私は、フードの下で笑う顔の顔を記憶に刻み付けて息絶えた。
私の遺体は翌朝、路地の奥で発見された。猟奇的な殺人鬼による9人目の犠牲者として、ニュースに取り上げられた。夢は警告だったのかもしれない。
私は死んでしまった。
でも、私にはやることがある。
来年の3月14日、あの男は再びホワイトデーを鮮血に染めることだろう。
10人目の犠牲者が出る前に、あの男に殺される運命をたどる少女に、夢の中で警告をしなければ。大丈夫。顔はばっちりと記憶している。
この悲劇の連鎖は、私で最後にしなければ。
8回見た夢。 かなたろー @kanataro_
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