第1話 転入初日1
「……胃が痛い」
次の日の朝、僕は学校へ持って行く大荷物を少し離れた場所に置いて知り合いの優雅なモーニングティーに付き合っていた。
「あらあら、久しぶりに会う友人が居るっていうのに体調不良?」
クスクスと笑う目の前の人物をジロリと睨み付けると肩をすくめている、確信犯め。
目の前の人物は
「貴女だって僕の転入に関わっているんですから、胃が痛い理由なんてすぐ分かるでしょうに」
「それは勿論、何ならもう既に胃薬は準備済みよ♪」
なんて簡単に言うものだから本当に確信犯である。
「それにしても氷葵ちゃん、結構落ち着いてるのね」
机の真ん中に置かれていたスリーティアーズに手を伸ばしかけていた僕は動きを止める。「…
「いいえ、褒めてるのよ?」
その言葉にため息を吐きながらスコーンを手に取り、頬張る。
「あら、それとも前のように隠しきっていると?」
「何も知らない癖に詮索するのやめてもらって良いですか」
普段なら聞き流せる台詞に反発的に答えを返してしまう。きっとこれも転入の影響だと割り切りながら僕はティータイムを過ごすのだった。
「冬代さんは此処で待っててね」
学園に着き、当たり前だが初めて見る先生が、事務に通してくれた。しかもソファーに座って待たせてくれるなんていい所だなぁとシミジミと思っていると、視界の端に見慣れた姿が映る。
「おはよう、
女子にしては少し低めの声、
「……おはよう、
「え、前みたいに呼んでくれないの」
久しぶりの再会とはいえ、馴れ馴れしくするのも違うかなと苗字で呼べばあからさまに声のトーンが悲しそうに下がる。
そういう所は何も変わらないなと心の中で苦笑して僕は彼女に向き合った。
「おはよう、
「ん、おはよう」
嬉しそうにニコニコとした表情を浮かべている彼女こそ、小学校からの幼馴染である。
他人が怖くて一人で図書館に引き篭もって本を読んでいた僕を色んな所に連れて行ってくれたのは史深だった。
……閑話休題、どうやら目の前の幼馴染は僕を教室まで連れて行ってくれるみたいだ。
普通こういうのは担任の先生だと思っていたので少し驚いた。
「今日、
白鶴先生、というのは確か僕のこれから所属する1-3の担任の先生だった筈。
未夏子先生が優しい先生よと言っていたから大丈夫とは思うが、若干心配なのは否めない。
「さぁ、行こう氷葵。
「そういう所、何にも変わってないね」
片耳に付けたワイヤレスイヤホンから最近よく聴いている音楽を流す。それだけで周りのガヤガヤも多少聞こえなくなったと思う。……右横を除いて。
「
一番後ろの席で本当に良かったと思う、視線が気になって仕方ない。
「
……反応を返すかと右横に身体の向きを変えれば、幼馴染は首をコテンと倒した。
「氷葵、どっか行っちゃうの……?」
そんな寂しそうに呟かないで欲しい、僕は一人称のせいで誤解されがちだけど女の子。それでもあの時からずっと目の前の少女に向けた“あの心”はまだ消えちゃいない。
「何処にも行かないよ、
そういうと嬉しそうに顔を綻ばせるから撫でようとする手を自制する。ダメ、撫でたらいけません。
人と過度に仲良くしない、これは僕が16年間生きて来て決めた約束事だ。ずっと一緒は成り立たない、それを僕は良く知っている。
「そういえば昨日の襲撃の事、氷葵は知ってる?」
「あぁ……飲食店の」
「そうそう!」
この世界に突然侵略して来た【バイアスデル】という組織は日々何処かしらを襲撃している。
それを未然に防ぐ、若しくは被害を最小限に抑える為に動いているのがこの國の権力者である【
封黎者は四人、その上に封黎者のトップが一人と合計五人で封黎者は成り立っている。
そしてこの世界は生まれ持った
金・銀・(白&蒼)・紅・黄色・水色・灰色・緑・紫・透明という順番だが、魔力量ってなだけで強さは関係ない。
封黎者の人は
僕?……僕はー……銀です、ハイ。この学年に銀って二人しか居ないらしいよ。
すると扉が開いて未夏子先生が顔を覗かせた。
「あ、居た居た。氷葵さんちょっと良い?」
…敬語の未夏子先生ってちょっと新鮮。僕は一言史深に断ってから未夏子先生に着いて行った。
1-3の教室から少し離れた所の教室、中には一人も生徒が居らず隠蔽結界が張られているのが分かった。
「どう? 魔力バレしてない?」
目の前の先生の手には金の
「バレてませんよ、そもそも言うつもりもありません」
そして僕はポシェットに付けている銀の
「バレちゃいけないとは言わないけど情報の秘匿性は特級だから気をつけて」
「分かってます」
そして僕はポシェットの隠しポケットから本当の
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