第0話 𝑷𝒓𝒐𝒍𝒐𝒈___

紺天こんてんノ國、なんて誰が付けたんだろう。側から見たらなんてキラキラネームな国だろうと思うに違いない。そうじゃなくても僕も思う。

腰に付いているポシェットには一本の鍵が付けられており、ポシェット内には拳銃が入っていた。普通なら《銃刀法》に違反するこの状態もこの世界ならそれには触れない。

それがこの世界の普通、当たり前、日常。

この世界に仇なす敵組織バイアスデルを潰す為に作られた封銃オルモスを普段から持ち歩けるのは一部の人のみ。

そう……《私立灯刃学園》の生徒と教職員のみである。

冬代ふゆしろ氷葵ひなた、16歳。今日付けで【私立灯刃学園】の高等科に入学します。


「なんて軽く言えるとお思いですか!!!」

バンッという固い物を叩く音が静かな部屋の中に響く。

此処は灯刃学園の校長室、言わずもがな偉い人が目の前には座っています。

そしてバンッと叩いた本人が僕…冬代氷葵です。

「まぁまぁ落ち着きたまえ、冬代君。お茶が溢れてしまうよ」

目の前の好々爺こうこうや感満載のこの人こそこの学園の校長である灯麻とうま先生で、僕に詰められても落ち着いている器の広い人物です。

「……幾ら上からの推薦だとして、それで幼馴染が通っているからとして。突然入学して来た人が馴染めるとでも?」

「そうならないようにもう手配してあるんだよ、君の幼馴染と同じクラスに転入してもらうんだ」

「……」

本当に上とこの人は何を考えているんだろうと天を仰ぎたくなる。

もう何年も会っていない幼馴染が此処に通っていると知ったのは入学手続きの時に担当の人が言っていたから。個人情報漏洩大丈夫かと心配になったものだ。

「良いんだよ、彼女も君の事をずっと気にしていたから」

「気にして……って」

ポカンとするとフフッと笑った灯麻先生は手を組むと僕に向けて言った。


「ようこそ、私立灯刃学園へ。歓迎するよ

【銀の封鍵オルモスキー】所持者、冬代氷葵君」

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