第49話 提携
フレドリカは、魔女の里で調査した結果を、簡潔に騎士団員に伝えた。内容としては、エルイーネはかつて超自然的な力を持つ魔女によって治められていたが、後からやって来た人々によって迫害され、辺境の地に追いやられたというものであった。考古学的証拠も出たと言うと、騎士団は大騒ぎとなった。
「それが本当だとしたら、リーアス神が世界を創造なさったという聖光教の教義は間違いだったということになるんじゃないか!?」
「お、俺たちが真実だと信じて疑わなかったものが、実は全くの嘘だった、だと……?」
「いいえ、そんなわけないわ! 訳の分からないことを言って私たちを混乱させて、フレドリカ嬢は何がしたいの?」
騎士団の人々の様子を眺めながら、フレドリカはふんと鼻を鳴らす。
「まったく、しょうがないわね。こういうことで嘘をついても、私には何の得もないわよ」
それでも騒ぎは収まらなかったので、業を煮やしたユリウスが、スカートを穿いているにもかかわらず、大股でずかずかと前に出て叫んだ。
「あーもう、ごちゃごちゃうるせえなあ! いいから黙って俺たち……というかソーニャたちに力を貸してくれっつってんだよ! この非常時にいつまであーだこーだ言ってるつもりなんだ、てめえらはよぉ! ソーニャは、もともとこの国を支配してた人たちの子孫であって、巫王っつう、魔女たちのリーダー的な存在の血を引いてんだ。だから、この国のトップに立つ権利を持ってんだよ。俺たちにはない、すげえ力を持ってる存在が、わざわざ自分から手を結びてえって言ってきてんだ。乗らねえ手はねえだろ?」
ユリウスの言葉に、「偽聖女の言うことなんて信じるか!」という声が上がった。すると彼は、皆に聞こえるぐらい大きな音を立てて舌打ちをした。
「てめえらを騙してたことは悪かったと思ってる。だがな、もう聖光教なんて、とっくに崩壊してんだよ! いつまで聖女とか偽聖女とか言ってんだてめえは! そんな概念、リーアス神とかいう幻想と一緒に消し飛んだっつーの!」
「……な、なんて口が悪いんだ。こんなのが聖女を名乗ってたなんて……」
「けっ、勝手に言ってろ!」
ユリウスと騎士団員の一人が言い合いをしていると、オーセが割って入ってきた。
「まあまあ、今は揉めている場合じゃないわ。で、どうなの、あなたたち? この人たちと手を組むのに賛成するの?」
「……」
騎士団の人々はしばらく思案をしていたが、一人の騎士が挙手し、口を開いた。
オリヴェルだった。
「……俺は、悪い話じゃないと思います。この国を守りたいというソーニャの気持ちに嘘はないでしょう。それは、長らく彼女とともに研鑽を積んできたからこそ、よく分かります。ヒルダも言っていましたが、ソーニャは常日頃から努力を欠かさず、剣の腕も立ち、エルイーネに対して篤い忠誠心を持っていました。先ほどの彼女の話しぶりからして、それは今も変わっていないでしょう。それに……フレドリカの言っていた、俺たちの先祖が彼女たちの先祖を迫害し、虐殺したということが本当なら、聖光教は欺瞞に満ちた教えであり、正統性は魔女の方にあるのではないでしょうか。彼女たちもまた、この国を憂う者であるという点においては、我々と同じです。……ともかく今は、過去の因縁は水に流し、手を取り合うべきではありませんか?」
その言葉に、一瞬場は静まり返ったが、やがてぽつぽつと手が挙がり始めた。
「そうだよな……この国をあらゆる脅威から守るのが、俺たち騎士団の務めだもんな。こうなったら、藁にもすがる気持ちだ。俺は協力に賛成する」
「僕は、ソーニャのこれまでの献身に敬意を示したい。正直に言って、魔女は信用ならないとは思ってるけど、彼女がこの国に尽くしてきたのは知っているから」
オーセはそんな人々の様子を見て、満足そうに微笑んだ。そして、ソーニャに右手を差し出す。
「よし、じゃあ決まりね。エルイーネ王国騎士団は、魔女……いえ、あなたたちは、自分たちのことを浄者と呼んでいるんでしたっけ? ともかく、あなたたちと手を組むことに決めたわ。よろしくね、ソーニャさん、ほかの皆さんも」
「……ああ。よろしく頼む。エルイーネの未来のため、手を携えよう」
ソーニャとオーセは、固く握手を交わした。どこからともなく、拍手が沸き起こった。
しかしその夜、十数人ほどの騎士団員が、詰所から姿を消した。
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