第13話 断罪
数日後のことである。
ソーニャはティデリア教会に向かっていた。教会から呼び出しを受けたからである。
「教会からわざわざ呼び出しとは……いったい、私などに何の用なのだろうか? ……もしや、聖女様の正体を知ってしまったことが露見したのか? だとしたら、罰を科されるのだろうか……ああ、恐ろしい。何とか弁明せねば……」
身震いしながら、ソーニャはとぼとぼと教会への道を歩んでいった。
「ソーニャ・ルンドグレーン、参りました。何のご用でしょう……っ!?」
教会に到着するやいなや、ソーニャは多くの衛兵たちに囲まれた。何事かと問おうと口を開きかけた彼女を、屈強な衛兵が羽交い締めにした。
「な、何をする!?」
「……」
衛兵は何も答えない。ソーニャは抵抗したが、それもむなしく、衛兵たちに寄ってたかって取り押さえられ、挙げ句の果てに両腕を縛られてしまった。
「来い」
冷たい声でそれだけ告げられ、ソーニャは強制的に引き立てられていった。
ソーニャが連れて行かれたのは、大聖堂であった。普段礼拝に使われるそこには、多くの聖職者たちが顔を並べていた。部屋に入ってきたソーニャの顔を見て、聖職者たちはざわめいた。何を言っているのかまでは分からないが、あまり良い印象を持たれてはいないようだ。
「いったい、私が何をしたというのだ……? ああ、聖女様の正体を……それは、これほどの大罪だったということか。仕方あるまい、甘んじて罰を受けよう」
ソーニャは力なくうなだれた。
その時、コツコツという足音が近づいてきて、大聖堂の扉が開けられた。聖職者たちは皆総立ちになり、揃って礼をする。一方のソーニャは、衛兵によって跪かされた。
大聖堂に入ってきたのは、大司教のハンスであった。彼は一度足を止めて一同をぐるりと見回すと、一つ息をついて、再び歩き出し、ソーニャの前で止まった。ソーニャは思わず顔を上げた。
「……大司教様……」
「おい。勝手に頭を上げるんじゃない」
衛兵に髪を掴まれ、ソーニャは無理やり頭を下げさせられた。ハンスは、
「良い。顔くらい上げさせろ。そして、自分の『罪』と向き合う機会を与えるのだ」
と言った。
「……『罪』ですか。それならば、既に自覚しております。私は……」
「今ここに、この者……騎士ソーニャ・ルンドグレーンの犯した罪を宣告する」
ハンスはソーニャの言葉を遮り、高らかに声を張り上げる。ソーニャは泣きそうになりながら、ゆっくりと顔を上げた。
すると、ハンスが膝をつき、何かをポケットから取り出した。
それは、ガラス瓶に入った赤黒い液体だった。ソーニャはそれを目にして、突如として吐き気を催した。
「さあ、これを嗅げ」
そう言って、ハンスは瓶の栓を取り、瓶をソーニャの顔の前に突きつけた。
「うっ……!?」
瓶の中の液体の臭いを嗅いだその瞬間、ソーニャは強烈な眩暈を覚え、激しい頭痛に襲われた。ソーニャは悶え苦しんだ。
「う……ああ……あああ……っ!!」
頭痛は、かなりひどかった。まるで頭の中を直接金槌か何かで殴られているかのようだった。頭蓋骨が割れるかのような痛みである。
痛みにのたうち回るソーニャを見て、人々は恐れおののいた。
「何が起きてるの!?」
「大司教様はいったい何をしたんだ……?」
そんな人々の声も、ソーニャの耳には届かない。彼女はただ床に倒れ伏し、呻くことしかできなかった。
しばらくして眩暈と痛みは治まり、ソーニャはゆっくりと目を開けた。
彼女の目に映ったのは、自分を見る人々の驚愕の表情だった。
「こ、これは……っ!?」
「どういうことですか、大司教様! この者は何者なのですか……?」
何が起こったのか分からず、ソーニャはハンスの方に目を向けた。
ハンスは、厳しい表情を浮かべてソーニャを見下ろしていた。しかし、彼女と目が合うと、すぐに視線を逸らし、聖職者たちの方を見て宣言した。
「……ソーニャ・ルンドグレーン。この者は、魔女の血を引く大罪人である!」
ソーニャは一瞬、何を言われたのか分からなかった。
「だ、大司教様……? 何をおっしゃるのです? 私が、何と……?」
「何度も言わせるな。ほら、これを見ろ」
ハンスは小さな鏡を取り出し、ソーニャに向けた。
「……は……?」
ソーニャはそこに映った自分の姿に、目を瞬かせた。
彼女の頭からは、ぐるりと曲がった羊の角が生えていたのである。
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