第2話
その時は、なぜいつも突然やってくるのだろう。
それまで当たり前にそばにあったものが、なくなる。僕の時もそうだった。本当なら、その先も、今までずっとそばにいるはずだった。
今回もまた、僕のそばから2つなくなった。いや、僕らのと言った方が正しいかな。
彼女の両親は、僕の試合が行われる会場に向かっている最中に事故に遭い、亡くなった。
原因は、相手が不注意で信号無視をしたかららしい。
ただ、まあ、僕らからしたらそんなこと些細なことでしかないのだけれど。
僕は2度目であり、あの時より成長しているからか、色々な感情はあるけれど、あの頃のように溢れ出ることはない。でも、許可があればすぐに感情に出せるくらいには溜まっている。
問題なのは、彼女のほうだろう。
試合会場で、その知らせを受けた僕らは、すぐに顧問の先生に許可を取って、搬送された病院に向かった。
病院に着くと、そこにはもうすぐ緊急手術が行われると言った感じで準備が進められた2人の姿があった。
奇しくも、2人を含めた僕らの動きはあの日にそっくりだった。そして、そのことを決定づけるようなことが起こる。
「今日、試合でだろう?今すぐ戻って、頑張りなさい」
「あの子を頼むわね」
少し違ったのは2人が同じことを言わなかった点だろう。
「任せてください」
少しの間をあけて、僕はそう答える。彼女は2人の姿を見るなり、待合室に戻ってしまった。だから、この約束は僕ら3人のものだ。
2人は、僕のその言葉に安心したのか、すぐに目を閉じてしまい、そのまま手術室にそれぞれ連れて行かれていた。
その姿を見届けて、僕は待合室にいる彼女に話をしに戻る。
「、、、」
「僕は、会場に戻るよ。君のお父さんに頑張りなさいって言われちゃったからね」
「、、、」
僕がそう言っても、なんの反応も帰ってこない。
「自分のペースでいいから。きつくなったら、試合、見においで。それまで負けずに待ってるから」
「、、、」
そう言っても、無言が続く。でも、これでいい。僕は、僕なりの方法で彼女を楽にする。彼女の母に頼まれたからには。
「あ、これだけ預けておくよ。僕の大切なお守りみたいなもの。いつでも、頼っていいからね」
「、、、うん」
一言だけ、たった一言返ってきた返事に笑みを返して、僕は、病院を出て、試合会場に向かう。あんなことを言ったんだ。負けるわけには行かない。
第二話です!
あと二話で終わります。ぜひ、読んでいただけると嬉しいです。
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