第1話
それは突然のことだった。
突如としてとある住宅街はクラクションとブレーキの音で埋め尽くされた。
それはなぜなのか。
答えは事故である。
僕は昔その事故で両親を失った。両親を亡くした僕を引き取ってくれたのは、それこそ親戚ではないが、親戚よりも関係を深く持っていた、とある家族である。その家族は、僕の両親が事故にあったと聞いて、すぐに飛び出してくるような優しい人たちだった。でも、その人たちが着く頃には、もう両親は助かる状態になく、誰にもどうしようもできない状態だった。でも、かろうじて意識は保っており、少しの時間ならまだ話せる猶予は残っていた。その時の言葉がおそらく遺言だったのだろう。両親は2人揃ってその言葉を言うとすぐに目を閉じた。その時の言葉はたった一つ。駆けつけた家族に向けられていた。
「「息子を、どうかお願い」」
「ああ、分かった」
「任せて」
その言葉に対して、その家族はそう答える。
このこともあり、僕はこの家族に引き取られた。
さて、僕の昔話はここらへんでいいだろう。
今は、あの家族にお世話になって、ずいぶん成長した。この人たちには本当に感謝しかない。
あ、そうそう。あの時家族が駆けつけたと言ったが、実はこの家族には子供がいるため、あそこに全員いたわけではなく、一人娘は家に残っていた。今では、その子と付き合って、仲良く過ごしている。この点でも、養子という手段を取らずに引き取ってくれたから、成立してるわけなので、やはり感謝しても仕切れない。
もちろん、今の僕があるのには、彼女も関係してきている。僕はあの事故があった時、小学生だったが、あれ以降しばらく学校はおろか、家の外にさえも出ることができていなかった。いや、ほんとに最初の頃は部屋からも出れなかったな。そんな時、僕が立ち直る助けとなったのが、彼女だった。毎日、僕に無理強いをするわけでもなく、寄り添ってくれた。僕が遊びたい時は一緒に遊んでくれ、泣きたい時はそばにいて、黙って見守っていてくれた。
「あ、もう!そろそろ準備して!部活の時間でしょ?」
「わかった」
どうやら、考え込んでいる間にそこそこな時間が経ってしまったらしい。今日は、部活の試合があるので遅刻するわけにはいかない。ただ、両親がその部活で今行っているスポーツ、バスケットボールを行なっていて、幼い頃に一緒にやっていたのを覚えているので、こうして、思い出して決意を固めているのだ。ただ、遅刻してしまっては元も子もないので、急いで支度を始める。幼い頃に母が買ってくれた僕がお守りと呼んでいるものも忘れずにしまう。
「ごめん、準備できたよ」
「もう、遅いんだから!急ぐよ?」
遅刻になってもしっかり待ってくれる。これは僕が小学校での不登校明けで学校に行く時から続いている。どちらかが学校を休めば、もう片方も休む。遅刻する時も一緒。そういう約束をしてくれた。
ちなみに彼女の両親で僕の引き取り手でもある2人は試合開始時間に合わせて、来てくれるらしい。本当にありがたい限りだ。
「ちょっと待って!」
そう声をかけ、僕は玄関で一度しっかり止まる。
「行ってくるね」
これは毎日の習慣である。玄関には、両親の写真が置いてあるので、それに挨拶してから出かける。
そんな毎日の習慣をこなして、僕らは家から出かけていく。
第一話です!
と言っても、長くするつもりはないので、次の次か、その次でエピローグになります。
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