第2話 暗転

 でも彼は……ダメだった。

 こんな事は私も経験が無く……「私が悪いのかも?!」と焦って……元カレから仕込まれた“色んな事”をすべて彼に試みたけど、彼はこうべも何もかも項垂れたままだった。


「ゴメンね! お互いお酒飲み過ぎたし……今日はもう帰ろうか」


 そう言ってホテルを出て駅までの道すがら……ふたりずっと無言だった。


 一緒に電車へ乗り込み

 私が降りる間際になって

「家まで送るから」

 との言葉を漸く発した彼を

「あなたも疲れてらっしゃるから」と電車へ押し戻し、私は遠ざかる電車の窓に小さく手を振り続けた。


「次のデートでは……もっと彼を気遣おう!」


 せっかく幸せの日が差した心に立ち込める暗雲を振り払う様に、私は自分を鼓舞した。



 しかし、その機会は永遠に訪れなかった。


 次のデートの日を待つ事無く、彼は亡くなってしまった。

 原因は分からない。

 いつもの時間に起きて来ない彼の様子を見に行った彼のお母様が第一発見者となった。


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